立ち技の新鋭による“MMA初挑戦”は極まる前にセコンドがタオルを投入して強制終了。唐突な決着に困惑の声が広がった一方、「このままでは靭帯が切れたり腕が折れる可能性が高い」と識者解説が危険性を指摘したワンシーンに対して、ファンからも「ナイスタオル」「選手生命が大事」と安全重視を支持する声が相次いだ。
9月7日、代々木第二体育館で開催された「K-1 WORLD MAX 2025~-70kg世界最強決定トーナメント・開幕戦~」。橋本雷汰(ALONZA ABLAZE)と長野将大(リバーサルジム武蔵小杉 所プラス)の一戦は、開始3分9秒、長野がMMA初挑戦の橋本の腕を取って間もなくセコンドがタオルを投入。試合はストップし、長野の勝利。極まる寸前の“強制終了”の英断が話題を呼んだ。
K-1のリングに総合格闘技の“HERO'Sルール”が復活。卜部功也の秘蔵っ子・橋本と、所英男の愛弟子・長野の対決にファンの注目が集まった。
橋本はK-1甲子園2022 -60kg王者でKrushを主戦場とする20歳の新鋭。今年6月のKrushではオープンフィンガーグローブマッチに挑戦し、水本悠我をKO。チャレンジ精神旺盛なファイターだ。一方の長野は29歳。2018年にZSTでデビューし、MMA戦績は10勝(1KO・5SUB)6敗。経験値は明らかに上回る。
試合は1ラウンドからスピード感あふれる展開。長野がバックハンドブローを繰り出し、そのままタックルでテイクダウン。倒れ際に体を入れ替えた橋本もアジリティを発揮するが、長野はすぐに体勢を奪い返し、バックを制してマウントポジションへ。キャリア7年、16戦の差を見せつける。
長野は右、左のパウンドで主導権を掌握。橋本は抱きついて耐えるが、頭をマットに叩きつけられる。さらに三角絞めを狙われ、抵抗しながらも上を取り脱出を試みる。だが長野は肘とパウンドを浴びせ、さらに追撃。腕が伸び切った瞬間に腕十字を仕掛けた。顔をしかめながらも耐える橋本を見たセコンドが即断。タオルが投げ込まれ試合終了。
会場はざわつく。「え?」「終わり?」と観客から困惑の声。しかし解説席は冷静だった。「タオル投げましたね、セコンドね…」と状況を説明。橋本陣営の判断による棄権と明らかになる。
ゲスト解説の秋山成勲は「多分肘が危ないと思ったんですよ。選手生命のことを考えると、あのまま極まっちゃうと靭帯が切れたり腕が折れたりする可能性が高いので…」とコメント。同席の石井和義K-1アドバイザーも「橋本選手は我慢するタイプだからね…」と頷いた。
秋山はさらに「(橋本選手は)タップしないタイプだと思うんですよ。性格を分かっていたんでしょうねセコンドは…。未来のことを考えたタオルだと思う」と続ける。橋本は「まだやれる」と不満を示したが、ファンからは「勝ち目がなかったからいいタイミングだったかもな」「選手生命大事だからな」「ナイスタオル」「セコンド優秀で良かった」と称賛の声が相次いだ。
挑戦者の存在なくして新しい試みは成立しない。橋本の師匠である卜部功也は自身のSNSで「橋本雷汰は負けましたけど、よくチャレンジしたと思います。雷汰は気持ちが折れてなかったけど、自分が厳しいと判断しました。申し訳ない気持ちと大きな怪我がないだけ良かったです。この悔しさで更に強くなると思います。今後も橋本雷汰の応援よろしくお願いいたします。」と本音、舞台裏を明かした。



