■進む外国企業の買収、なぜ日本人は嫌いがちに?

外資による買収提案件数
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 IBコンサルティング代表の鈴木賢一郎氏は、相次ぐ買収提案について「円安に加え、2023年に経済産業省が公表した“企業買収における行動指針”が背景にある。買収提案が来てもすぐに断るのではなく、取締役会に付議して検討しなければならないという指針が出たのが追い風だ」と説明する。「加えて、取引先同士などが、安定株主対策として株を持ち合う関係性が崩れてきている。そこで『日本企業を買える』と考えた外資の攻勢が強まっている」。

 また、「安全保障上の観点からは、外為法で守ることができるが、買収防止のために発動されたのは1例しかない。上場会社同士が、株の持ち合いで互いに守ってきたのが、日本の実情だった」と振り返る。

 2ちゃんねる創設者のひろゆき氏は、「なぜ買いやすくなることが、悪く言われているのかわからない」と語る。「買われたくなければ上場しなければいい。もしくは、最初から50%以上を取られないように上場すればいい。買収防衛策を講じていればいいだけではないか」。

 これに鈴木氏は「買われたくなければ、きちっと株主構成を整備すればいい話だ。そもそも上場しているのであれば、買収も甘んじて受けなければいけない」と同意する。

 近畿大学情報学研究所所長の夏野剛氏は、「反対している人が勘違いしている点」を示す。「外資が来ればビジネスのあり方が変わる前提で話しているが、日本には1億人以上の人口があり、ビジネスはますます強化する。当たり前だが、買収すれば買収額以上に時価総額を持っていこうとする」。

 
 ただ、外資による買収後に、退職者を募るケースもある。鈴木氏は「いいリストラもあれば、株主の都合だけを考えたリストラもある。日本の買収防衛策は、時間と情報の確保が主目的だ。買収者の本音や、買収後の経営方針を確認・精査する手続きを踏んだ方が、ステークホルダーには望ましいだろう」と考えている。

 そして、「競争力の強化を考えれば、業種によっては外資を受け入れた方がいい面もある。日本の株式市場は現在、3分の1が外国人投資家だ。投資してもらうと考えれば、歓迎する見方もある」とした。

■上場企業が買収されることの意味
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