■多様なハラスメント、増え続ける相談件数

コンプラ担当の悩み
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 パワハラ防止法の制定により、相談窓口を設置していると周知している企業は約8割にまで増えた。相談内容はパワハラ、セクハラが上位を占めるが、配慮なく過剰な音で周囲を不快にする音ハラ(音ハラスメント)、仕事は楽しいものだと思うことを強制するエンハラ(エンジョイハラスメント)、不機嫌な態度やため息などを繰り返して苦痛を与えるフキハラ(不機嫌ハラスメント)など、40種類以上にも及ぶと言われている。

 企業のコンプラ担当者への研修などを行うインプレッション・ラーニング代表、藤山晴久氏は「相談窓口が法制化されたことで、担当者が普段の業務に加えて、相談業務が非常に増えた。相談を乗る方も、社内の場合は一般の従業員であり専門家ではない。専門家でない人が、社内のいろいろな問題を聞き、さらにいろいろな要求があるので、精神的にはしんどい。結果的にストレスが高まってメンタルが悪化する」と、担当者の状況を説明する。

 スタートアップ企業のコンプラ担当をした時期にストレスから適応障害・不安障害になった、かのこさんは、パワハラをしたとされる社長と従業員との板挟みになった。「(当時は)少数精鋭でやっていたので、相談できる仲間もいなかったし、内容もセンシティブだったので、余計に自分で抱えがちになった」。中には、相談に乗ってくれているかのこさんに被害者が暴言を吐くこともあり「私も人間。チャットボットではない」と本音を漏らす。また上司に対するハラスメントをきっかけに「私がパワハラ、セクハラを受ける二次災害も起きた」と、解決に向けて動いた本人が、新たなハラスメントを受けるという悪循環にも陥った。苦労した分、解決すればまだ達成感もあるだろうが「お互いが泥仕合のようにエスカレートしてしまい、うまくきれいに収めることの方が正直少ない」と振り返った。

 ハラスメントをした人が上司、さらには企業トップである社長などである場合、問題解決はさらに困難を極める。このケースはどうすればいいのか。藤山氏は「本来ならば事業主トップがきちんと受け止めなければいけないが、そこが機能不全になっているならば『トップがこういう状況です』と外部に助けを求める以外ない」と、第三者の介入を勧めた。

■困窮する“ひとり親家庭”を救うスキームも
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