■ハラスメントの相談が社内政治に悪用されるケースも

ハラスメント相談
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 金融企業でコンプラ担当の経験を持つ山本さんは、ハラスメントを悪用した社内の政治闘争を目の当たりにした。「以前勤めていた外資系の会社で、本部の下にいくつかの部がぶら下がっていたが、本部長のやり方が気に食わないからと『あれはパワハラだ』と部長たちが組むような形で名乗りを上げたので、その通報がグローバル(海外本社)の本部に上がってしまった。この本部長がグローバルとあまり仲がよくなかったこともあり、上と下の板挟みになる形で本部長の任を解かれ、その後に自主的ながら退社してしまった。さらにその後、告発した部長たちのうちの一人が、事実上の本部長に就任した」。

 金融機関のコンプラ担当ともなれば、不正調査なども業務範囲に含まれるという。「調査の中で結果的にその懲戒処分をするとなると、対象者の今後の人生のこと考えてしまう大変さもあった。事実関係の認定についても、それが真実なのかどうかの確認ももちろんだが、その事実関係に応じた比例原則に従った制裁をしなければならない判断が、私にとってはかなりしんどかった」と、同じ社員を裁くことにつながるストレスについても触れた。

 情報キュレーターの佐々木俊尚氏は、海外からは遅れを取っている言われる日本のコンプライアンス対策について、日本特有の課題も指摘する。「パワハラではないものまでパワハラと言っている場合もある。その場合、日本社会特有の『事なかれ主義』が働く。知り合いの銀行員も、支店長候補だったが、認定まではされなかったものの部下を叱責したことをパワハラ申請されたことが傷になり、出世の階段から微妙に外された。これは性暴力やMeToo運動にもつながるところがあり、言われた瞬間に全ての権利を剥奪してキャンセルするようなもの。それに反論する場が日本ではできていない」と、声をあげられた側が圧倒的に不利になる実情を伝えた。

 今後も増えるだろう相談件数に対して、企業としてはどうあるべきか。藤山氏は3つの課題をあげた。「1つ目は担当者の数が圧倒的に不足していること。相談件数が増えているのに、担当者の数が変わらない現実がある。2つ目はノウハウ不足。あくまで一般の従業員がやっていて、相談のテクニックもなければカウンセラーでもない。大きい会社なら人事異動もあり、3年経ったら別の部署に行くなどしてノウハウがたまらない。そして3つ目はフォロー不足だ。上司が相談担当の仕事の大切、大変さをなかなか理解できていない。『気合いと根性で乗り切れ』という上司もまだいる。担当者の心の苦しみにまで目が届いていないのではないか」。
(『ABEMA Prime』より)
 

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