7月、日産化学が販売する除草剤『ラウンドアップ』に関して、「ベトナム戦争に使われた枯葉剤と同じ成分」「脳神経発達障害やがんを誘発する」などの誤情報を投稿したとして、投稿者に損害賠償命令が下された。
ラウンドアップと枯葉剤は全く別の成分であり、神経毒性や発がん性については食品安全委員会が「認められなかった」と評価している。(2016年農薬評価書より)
なぜ誤情報の投稿に至ったのか。投稿者が影響を受けたとしているのが「ラウンドアップに毒が含まれている」などと主張するシーンが含まれる映画だ。裁判の過程では、こう述べている。
「映画を見て、その内容を鵜呑みした」「ショッキングな映像に刺激された」(投稿者、以下同)
また、当時の投稿からは、「日本でマスコミ報道されていない」「実態を知って大事な人を守らないといけない」とその内容を信じ、知らない人に伝えるべきと考えている様子がうかがえる。
こうした投稿について、ラウンドアップを製造・販売する日産化学側は削除を要請するも、投稿者は当初、対応しなかった。
「インターネットで改めて調べた際に、情報が100サイト以上と多く、確認するのに時間を要した」
投稿者が確認した情報源としてあげたのは各種の報道記事やまとめサイト。中には疑義が出て取り下げられた論文に基づいた情報などもあった。
農薬等のリスクコミュニケーションに詳しい東京大学名誉教授の唐木英明氏は、以下のように説明する。
「反対派の人たちは非常にわかりやすい物語を作る。我々は健康に『危険だ』という情報の方を信じる。『安全だ』という情報は『本当かな』と思うところがある。だまされてしまうのは、人間の本能として仕方がないところがある」(東京大学名誉教授・唐木英明氏、以下同)
投稿者は最終的には誤情報を認めて謝罪するが、削除するまでに2カ月を要している。
では“情報リテラシー”としてよく指摘されるように、一次情報を確認すればすぐに解決していたのだろうか。
「一次情報」は難しすぎる?
