50年以上前に山の一軒家を出て麓に移住した女性は、3年前に夫を亡くした後も1人で山に通い、畑の管理を続けているという。そこは先祖代々の土地であり、「むやみに処分するわけにはいかない」という思いを語る。
ちょうどじゃがいも掘りの予定があったという女性の車に先導され、捜索隊はいよいよ山奥の一軒家を目指す。無数に連なる森を抜けていく山道は幅が狭く、ガードレールのない崖道が続く。運転席からもはるか眼下に広がる谷底が見えるほど険しい道のりだ。捜索隊が「細いし、ガードレールもない」「怖いです」と慎重になる中、女性は「国道のほうが怖いです」と慣れた様子で車を走らせた。
たどり着いた切り開かれた土地には、白い三角屋根の建物と片流れの屋根の小さな建物が2棟立っていた。かつては築100年以上だという夫の生家である母屋があったが、女性が50代の頃、夫と2人で半年かけて解体したという。「仕事していたから土日(作業)。最後、床を壊す時には『あ〜疲れた』って(笑)」。
女性がこの地に嫁いだのは19歳の時。花嫁衣装のまま3kmにも及ぶ険しい山道を歩いてきた。当時の山での暮らしは、田んぼや牛の世話をする農林業が中心で、7軒ほどの集落で人々が助け合いながら生活していたという。しかし、雪が2mも積もる豪雪地帯であったことや、子どもたちの教育を考え、51年前に一家5人で山を下り、麓の宅地造成された場所へ移住することを決めた。
今の生活は「幸せ」
