高性能チップの開発は不可能?

AI研究者の今井翔太氏
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 中国の大手ITアリババのAIチップ開発の噂があるというが、AIで使う高性能の半導体は作れるものなのか。ニュース番組『ABEMAヒルズ』のコメンテーターでAI研究者の今井翔太氏は「作れない」と話す。

「最先端の物は作れない。戦車を作ろうとして工場が必要。でも工場を作るためには鉄などが必要。でも、鉄を作るための技術がそもそもないぐらいの状況。今の最先端半導体を作れるところは台湾のTSMCしかない。半導体の製造装置は何百億円かかる最先端の機器で、世界に1企業しか作っていないものがたくさん必要。中国は輸出制限を受けているので、その1企業しか作れない半導体製造装置を手に入れられない。ASMLの露光装置も手に入らないので、そもそも作るための技術がない状態で頑張らなければならない。常識に考えると5年かかって追いつけるかどうかのレベル」(今井翔太氏、以下同)

 では、なぜ中国はエヌビディアのチップを規制するのだろうか。

「2023年ぐらいからアメリカ輸出制限、GPU輸出制限を受けた。一国しか作れる場所がない、エヌビディアが基本的に作っている。それに中国は頼らざるを得ないが、アメリカの顔色を伺わないと手に入らないという状況がずっと続いている。最近もアメリカの動向を伺って、性能を落とした劣化版ならトランプ氏が出してもいいということを言ったが、これを続けていくと将来的にどうなるんだ。中国は劣化版しか手に入らない、国内で作る力もない。将来的に安全保障や政治の問題になったときにどうするんだということで、自国で完結させようという意識が強くなってきた」

 自国で半導体製造しようというのは中国だけではないという。

「アメリカにはエヌビディアがあるが、設計企業なので物理的にチップを作っているわけではない。それができるのはインテルだが、最近トランプ氏がインテルに出資した。出資したというのは、アメリカの中で半導体を物理的に製造できる企業を抑えておこうという意図があると思う。日本だと、ラピダスという国策半導体企業を作ろうとしているので、特に日本は、アメリカ、中国もそうだが、安全保障や政治的にもすごくセンシティブな状況に置かれているので、いざ何かあったら半導体のサプライチェーンが切れるかもしれない。中国以外にも自己完結を意識している状況」

(『ABEMAヒルズ』より)

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