ブロードコムはなぜ急成長?AI研究者が解説
アメリカでブロードコムが急成長を遂げている背景を、ニュース番組『ABEMAヒルズ』のコメンテーターでAI研究者の今井翔太氏が次のように解説する。
「ブロードコムは、エヌビディアのような汎用チップ、誰でもいろいろなものに使えるチップというよりは、カスタムチップ、我々はASICと言うが、そういう特定の顧客向けに顧客の希望を受け入れて、それ向けにカスタマイズしたチップを作っている。今回はOpenAIの発注があったという話だと思うが、前からやっていて、GoogleはTPUという、GPUと別のチップを昔から使っている」
超大手AI企業がブロードコムに発注するのはなぜなのか。
「Googleは違う気もするが、基本的にはエヌビディアに頼りきっている。別にエヌビディアが必要なくなるという話ではない。エヌビディアに頼りすぎて、エヌビディアが何かあったときどうするんだ。エヌビディアは限界まで生産能力を使っている状態なので、GPUの取り合い。エヌビディアでは何かあったときにチップの供給がなくなる。なくなったら我々AI技術を持っていたとしても作るためのリソースがなくなる。すごく怖いことなので、予防線として持っておこうというのはあると思う」
「あとは、カスタムチップは安い。顧客の要望を受け入れて個別に設計するので、無駄もないし、すごく安い。1個あたりの値段だとエヌビディアのチップ1個500万とかするが、カスタムチップだと100万~150万ぐらい」
では、ブロードコムの性能はエヌビディアと肩を並べるのか。
「一部のユースケースだとエヌビディアを超える部分もある。ただ、汎用性に欠けるので、何でも使えるわけではない。半導体のブロードコム以外にも、半導体チップを我々が作るんだという企業があって、専用チップを作ろうとしているが、失敗しているところもある。専用に作ろうとすると、今ある技術の中でそれに特化したハードウェアを設計しようとする。でも、AI技術はすごく日進月歩なので、別の形のAIが出てきてしまうと、設計したチップが使えないということが割と普通に起きる。
「極端な例だが、今の生成AIの基盤になっているトランスフォーマーというニューラルネットワークが、少し変わった処理のニューラルネットワークで、これに特化したAIチップを作ろうとしているんだと思う。仮に、トランスフォーマーというのが1年後、2年後に別の技術に置き換えられてしまったら、発注したカスタムチップはどうなるんだという話になってしまう。ただOpenAIがここまで思い切ったことをするのは、長期的に見るとそういうことは起こらないだろうと。今のうちに設計して作った方が長期的に見ると得をする。エヌビディアとGPUを併用しながら自分たちの研究開発に使う、さらにそのユーザーへのサービス提供に使うっていうことをやっていこうと。そのリソースはエヌビディアだけでは足りないので、ブロードコムに頼ろうという流れ」
(『ABEMAヒルズ』より)
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