■教団トップが出頭、次々に明らかになる不正

韓鶴子総裁
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 旧統一教会は、韓国で2つの事件で追い詰められている。どちらも前大統領の尹氏に関連したもので、妻・金被告にブランド品、側近に1億ウォン(約1000万円)を不正に渡したとされ、これを指示したと言われているのが韓総裁だ。韓総裁は、病気を理由に出頭要請を断ってきたが急転、17日に出頭をした。

 20年以上、旧統一教会を取材するジャーナリスト・鈴木エイト氏は「韓国では大統領が代わると、前政権に対しての捜査が起こりやすい。今回は尹氏や金夫人への疑惑を追求する中で、思わぬ副産物として旧統一教会の問題が出てきた。かなりいろいろな有力議員も関わっていて、一気に大きな問題になった」と経緯を説明する。

 旧統一教会と政治家との絡みは、2つの事件に留まらない。「他にもODA(政府開発援助)を引き出す見返りに、他の政治家に相当お金を使っているのでは、ということもある。韓国の報道でも、韓国に限らず日本やアメリカの政治家に対してもギャラが決まっているだとか、政界工作に相当お金を使ってきた形跡がある」。

 韓総裁の出頭を巡り、教団内も大きく揺れた。ソウル近郊では全世界から1000人を超える幹部が集まる緊急集会が開かれた。「韓総裁を支えようという祈祷を行ったらしいが、実際には“人間の盾”として強制捜査や拘束などがあった場合に、幹部の信者を守ろうという意図もあったようだ」。韓総裁が今後、逮捕されるか在宅起訴になるかは微妙なラインだが、教団トップが警察の捜査を受けて摘発されることで何かしら影響は出る。「関連企業への影響もあるが、やはり信者の内面、信仰がどうなるか。これに関しては、むしろより強固になっていく方向に行くのではないか」と、教団の危機に直面することで信仰が強まるという見解を示した。

 教団の問題だけに、トップの責任を問う声があがると思われるところだが、信者たちは韓総裁ではなく、周囲の幹部の責任と捉えている。「反応を見ていると『お母様がかわいそう』だと。幹部たちの不正な蓄財やずさんな資産管理で韓総裁に迷惑がかかっているという認識だ。韓総裁が非難の対象になることはありえないので、より崇拝が強まる傾向に行く」と内情を説明した。

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