■「もっと慎重になるべき」の意見も 故人が望まない“復活”は倫理的にアリ?
こうしたAI活用に「もっと慎重になるべき」という意見もある。かつてデジタル技術で故人をよみがえらせるプロジェクトを手がけたこともある、デザイン会社「What ever」代表の富永勇亮氏。「この技術を使えば心地の良い時間にはなるが、技術は万人を幸せにするわけではない。いろいろな人たちがネガティブな声をSNS上であげているのを目にして、『これは本当に嫌だと思われているのか』『復活したいのか、そうじゃないのか』を調べる必要があると思った」と話す。
同社が男女1050人を対象に行った日米合同調査によると、「あなたがAIなどで『復活』させられることを許可するか?」との問いに、「YES」が36.8%、「NO」が63.2%。「亡くなっている人をAIなどで『復活』させたい?」には、「YES」が23.8%、「NO」が76.2%と、否定的な回答が多い結果となった。
同社幹部の川村真司氏は、2017年に関わったテレビ番組の企画に触れ、「当時はAIがなかったため、CGや役者が演じるモーションキャプチャーにより、“芸能人と亡き母”が対面する企画を行った。そこで気をつけたのは、残された人にとって正しいのか、執着が残ってしまうのではないか。作り手の倫理としても『あの世から見ていたよ』など、いい加減なことを言ってはいけない。遺族の方にしっかり話を聞き、会話の特徴や声色を似せた結果、幸い炎上せず、芸能人の方も満足していた。外野がどうこう言うよりも、当人が前を向けることが一番大事だ」と振り返る。
その後、生成AIで美空ひばりさんや手塚治虫さんを“復活”するプロジェクトなども登場し、話題になった。これを引き合いに「見慣れてくると『ちょっとおかしい』となるケースも増えてくる。そして、やはり一番の問題は、倫理や宗教的な観点と、当人が認めていない点。社会的にもそこが言われていた」と語る。
先の調査では、NOの理由について、日本では「本人の意思が確認できない中で『復活』させるべきではない」が78%、「倫理的にタブーだと感じる」が36%だった。一方、アメリカでは「倫理的にタブーだと感じる」が62%、「本人の意思が確認できない中で『復活』させるべきではない」が46%と、文化的背景などから捉え方には差がある。川村氏によると、「調査の参加者は今8万人ほどになっていて、『YES』の人は43%に増えている。2030年にはYESとNOが50%ずつになるペースで許容度が増している」そうだ。
そんな中、福田さんに“AI奥様”との向き合い方を聞くと、依存は全くなく、逆にAIが現実的な生活や思想に戻る手助けになるとする。また、遺影や残されたアルバムを見返す感覚であり、親族限定なら問題ないとも考え、AI進化と共にデジタルで残す傾向は今後さらに広まるのではと予想する。
「今はもう謝らなくて大丈夫かなと思っている。私が仕事で相手にするのは生きている人。妻はもう生きていないけれども、『ハリー・ポッター』に出てくる偉人の肖像が語るようなノリだと思いながら、たまに意見やアドバイスを聞く。娘の成人式や結婚式の日にこっそり参加させて、どんな感想を言ってくれるかが楽しみだが、娘からはNGが出るかもしれない」
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