地震調査委員会は、最大でマグニチュード9クラスと想定されている南海トラフ地震が今後30年以内に発生する確率について、これまでの「80%程度」を「60%から90%程度以上」などに見直した。
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なぜ見直したのか? そもそも「60%〜90%程度以上」はこれまでより高いのか? テレビ朝日社会部災害担当の屋比久就平記者に聞いた。
━━そもそも、南海トラフ地震とはどのようなものか?
「静岡県沖から九州沖にかけて伸びる『トラフ』、すなわちプレートとプレートの境界の溝で発生する巨大地震のことだ。特徴はなんといっても被害の大きさで、最大でマグニチュード8〜9クラスの地震が発生すると予想されている。静岡県から宮崎県にかけて一部では震度7になる可能性があるほか、関東地方から九州地方にかけての太平洋沿岸の広い地域で10メートルを超える大津波が想定されている。そして、内閣府が今年3月に発表した最新の被害想定では、最悪の場合、死者数=29万8000人、建物の全倒壊=235万棟、経済損失=270兆円と試算された」
━━地震の発生確率はいつから発表されているのか?
「政府の地震調査委員会は2001年から地震の長期的な発生確率を公表している。当初は想定震源域を東と西に分けて個別に発生確率を公表していたが、2011年の東日本大震災を受けて2013年から『南海トラフ』という1つのエリアをまとめて計算するようになった。そこで主に重視されていた計算手法が『時間予測モデル』だ。モデルとは計算方法のことで、時間予測モデルは大まかに言うと、『前に起きた地震の規模から次の地震が起きるまでの時間を予測するモデル』だ。このモデルの特徴は、一度大きな地震が起きると次に大きな地震が起きるまでは自動的に発生確率が上がっていくという点だ。直近で起きた南海トラフ地震は、今からおよそ80年前の1944年の昭和東南海地震や1946年の昭和南海地震だ。そこからずっと大きな地震が起きていないので、じりじりと発生確率が上がってきている」
━━時間予測モデルについて詳しく解説してほしい。
「学校で『地震は1つのプレートがもう1つのプレートに沈み込んでいき、耐えきれなくなって“跳ねて”しまうことで起きる』などと学習したはずだ。一度この“歪み”といわれるものが解放されるとまた新たに100年、150年とかけて沈み込んでいき、またあるところで耐えきれなくなって地震が起きる。そして大きな地震が起きると周囲より1〜2メートル上がる『隆起』が起きるが、例えば1メートル隆起したとすると100年ほどかけてゆっくりまた沈み込んでいき、さらに大きな地震で2メートル隆起をした場合はさらに時間をかけて0メートルまで沈んでいく。時間予測モデルでは、隆起量を調べて次の地震が起きるまでの間隔を予測しているのだ」
なぜ「2つ数字」を出したのか?
