出発してすぐ砂利道に入ると、起伏が激しい荒れた山道を進んでいく。視界が開けた場所に出ると、手つかずの大自然がどこまでも広がる雄大な景色が目に飛び込んできた。ただ、その先は岩肌むき出しの崖道が続き、捜索隊は「絶景なんだけど、道が細くて」「日本のヤバい道より怖い」「高さ(標高)のレベルが違う」と、ガードレールもない断崖絶壁の道に恐怖を覚える。
そんな中、野生のシャモア(アルプスカモシカ)を発見したり、断崖絶壁の上に築かれたピエルラスの村の美しい集落を望んだりと、アルプスならではの壮大な景色を堪能した。
険しくも美しい道のりを越えた先、標高1200mの山の上に、奥行きの長い三角屋根の建物が4棟並んだ養鶏場にたどり着いた。出迎えてくれたのは、エリック・マルタンさん(54)と妻・マルタさん(49)だ。
夫婦2人で、約7ヘクタールの敷地で2000羽の鶏を放し飼いで育てているという。4つある鶏舎は出生日別に分けられ、隣接した斜面に設けられた放牧地に、鶏は自由に出入りできるようになっている。
飼育しているのは、2つの品種を掛け合わせた「青い足」と呼ばれる鶏だ。オスはフランスの有名な地鶏「ガロワーズ種」、メスは黒い羽毛の地鶏。肉質が非常に良いため、クリストフさんをはじめとする星付きシェフたちに人気が高く、スーパーで売られている鶏肉の約3倍の値段で取り引きされているという。エリックさんは「ここは平らなところがないから、毎日動き回って良い筋肉がつくんだ」と語った。
一方で、鶏を外に出しっぱなしにすると、空から鷹や鷲に襲われたり、暗くなると狐が襲ってくる危険がある。そのため、夜は必ず鶏舎に戻す必要があるが、この広大な敷地で鶏を追い込むのは一苦労だ。そこで活躍するのが、キンバヤとマヤという2匹のボーダーコリー。エリックさんが指示を出すと、犬たちは放牧地へ散らばった鶏たちをゆっくりと小屋へ誘導し、その働きぶりに捜索隊は「この2匹がいるから成り立ってる仕事ですね」と感嘆した。
前職は化粧品会社の営業部長という異例の経歴
