■新作発表、インバウンド客狙いの施策も
能楽のような伝統芸能の世界は、先祖代々受け継がれるというイメージを持たれがちだが、実際には血縁関係などなくても飛び込める世界だ。国立劇場養成所では、能楽・歌舞伎などの研修生を定期的に集め、能楽であれば最長で6年間、稽古を積むことができる。受講料は無料で、地方から出てくる人には住宅手当も出る。育成制度も完備され、返済免除の場合もあるという。
また担い手だけでなく、新たなファンの獲得も模索している最中だ。歌舞伎界では、現在流行しているエンターテインメントとのコラボ演目などが人気を集めている。上田氏は「人気アニメの能・狂言をされている方もいるし、私もコロナ禍に(当時話題になった)『アマビエ』を元に新作を作った。人間の深い心象表現を求めている芸能なので、普遍的なものであれば現在の題材でも十分に表現になりうる」とした。
海外公演をすれば、現地でも盛況だ。ただし常にそこで公演し続けるという意味ではコストパフォーマンスに見合わないというのが、能楽に生きる人々の共通見解でもある。むしろ海外から日本に来ているインバウンド客に対してのアプローチも強めている。
上田氏は、インバウンド客をターゲットにした新たなビジネスモデルの構築も進めている。「兵庫の丹波に今年、能楽堂を建てた。そこではインバウンドの富裕層が泊まれるようにもした。宿泊ができて、食事も酒も出せる。地元の食文化を楽しめるし、茶室もある。能も見られて、体験もできて、泊まれる。2泊3日で地域観光、歴史的な神社・仏閣に行くようなパッケージを作った。今は販売をする準備をしているところだ。兵庫県としても、これは重要な事業になるのではと思って、多くの方と話をしている」と、新たな可能性に挑戦していた。
(『ABEMA Prime』より)

