■“議員を減らす”精神論をどう受け止めるか
かつて国会には、衆議院選挙制度に関する調査会が設置され、2016年に答申(骨子)が出されていた。「現行の小選挙区比例代表並立制を維持」「衆議院議員の定数は多いとは言えないが、各党が削減を公約に掲げていることから、削減するなら10削減(小選挙区6/比例4)」「比例代表選挙は現行11ブロックを維持」「選挙区間の一票の較差は2倍未満」などの内容で、答申後の2016年に475議席から465議席へと削減された。
議員定数削減を検討した国会の調査会メンバーだった、津田塾大学教授の萱野稔人氏は、「野田総理と安倍氏が削減を約束して、その後の安倍政権で話し合ったが、各党の利害が衝突して話がまとまらなかった。そこで利害関係のない有識者会議が素案を作ることになった」と振り返る。
有識者会議での議論については、「定数削減が本当に成立するのかと検討し、結果的に『10人削減』を答申した。日本は人口比でいうと議員数が少なく、これは『議論がスリム化される』ことより、『国民の権利が削られる』ことに近いという共通認識があった」と語る。
過去を振り返り、「1925年の普通選挙制導入時は、衆議院は定数466で、今の465より多かった。しかし当時は、まだ人口6000万人で、今の半分しかいない。歴史的に見ても、極めて少ない議員数で国会を運営しているのが現実で、『さらに削る根拠はない』と調査会でも確認した」という。
しかしながら、「ほとんどの政党が定数削減を公約に掲げたため、無視できなかった」のだそうだ。「明確な根拠はないが、無視すると調査会の正当性がなくなるため、削れるギリギリの範囲で答申した。削減を求める側が、まずは『削減によるメリット』を出す必要があり、『身を切る改革でやらないと』と言うのは精神論に聞こえる」。
定数削減のデメリットとしては、「代表者を選べる幅が少なくなる。小選挙区の定数を削ると、地元で代表者を選べなくなる。人口の少ない鳥取や島根では、大きな選挙区を作る必要が出てきて、『鳥取県民だが島根の偉い人を選ばないといけない。地元じゃないからリアリティーがわかない』となる」と解説する。
■「身を切る改革」はパフォーマンス?
