■AIが発展したら役者はいらない?

ハリウッドで猛抗議
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 映画の本場ハリウッドでは、AIは話題になるどころか、映画俳優組合が猛抗議を行う事態に発展している。AIの活用制限などを求め、約4カ月にわたる大規模なストライクが行われたこともあるほどだ。俳優として舞台・映画で15年間活動してきた岡野優介氏にとっても、AIの加速度的な進歩により、危機感が膨らむばかりだ。「道筋を断たれてしまうのは中堅と若手。これから俳優として頑張っていきたいと思っている人たちはそうすればいいのかすごく考える」という。

 役者の中でも売れっ子になってしまえば、AIが取り込むモデルとしての価値が生まれ、そのライセンス料によって収益を得られるかもしれない。ただし、無名の役者・新人役者の場合は、AIが作りあげる仮想の役者に仕事を奪われる側になる。岡野氏は「エキストラだったり、一言や二言しかない役は、全部(AIに)持っていかれる。今よりもっと仕事がなくなるだろうと思う。人間味とか深みというものにも、限りなく近いところまで追いついてくるのではないか」と近未来を予想する。

 ただ、AIだけで映画を作った遠藤氏は、むしろ人間の価値が残っていくと語る。「目で訴えるとか、魂の叫びとか、寒気のするような恐怖とかは、AIには表現できないと思う。人がいらなくなることはない。人が泣くというのも、悲しさだけではないし、複雑な感情が目の力に出る。そういう意味では、より(人間という)本物は、ものすごく需要が上がる」と語った。

 またコラムニストの河崎環氏も、リアルの熱量は必要だと語る。「AIには、私たちにはできないことができると怯えるが、人間の能力を拡張するために使うべきもので、人間を代替するために使うものではない。アナログの場でも、舞台の上で本当に躍動して演じているのは人間ではないか。感動が欲しくていく客は、やはり実際に動いている人間の汗を見て感動する。人間がどんどん代替されていくのは、デジタルの世界の話でしかない。劇場の上の人たちは代替されないし、意外とみんながダメージを受け過ぎではとも思う」。
(『ABEMA Prime』より)
 

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