近年、ムエタイ仕込みの技巧と洗練されたコンビネーションにさらに磨きがかかる志朗と、100戦以上の実績を誇る本場ムエタイの実力者ペットサンコムとの対戦。

 1ラウンド序盤、志朗はゆっくりとサークリングしながら右ローキックとジャブで間合いとリズムをコントロール。ペットサンコムはムエタイファイターらしいスロースタートだが、時折鋭いミドルキックやジャブで応戦する。志朗はフレームで勝る相手のリーチと間合いを意識し、要所でカウンター。左右のパンチやボディ攻撃と、キックボクシングらしい“確実に当てる”戦い方でペースを握り、最初のラウンドを終えた。

 上々の滑り出しを見せた志朗は、2ラウンド序盤で一気に勝負に出る。速いローで相手を下がらせると、ジャブとフェイントから巧みに距離を詰め、左ボディフックから右ストレート。追撃の連打でペットサンコムをロープ際まで追い込むと、鋭い右ストレートがクリーンヒットし、ダウンを奪う。

 ペットサンコムはすぐに立ち上がるも表情は強張ったままで、レフェリーの呼びかけにも無反応。ぼんやりと相手を見つめる目が泳いだ”虚無状態”であることを受け、若干遅れて危険を察知したレフェリーが抱き抱えて試合をストップ。無表情すぎて分かりにくく、あっけない結末にファンからも「ダメか」「早すぎる」「ダウン?」との声が漏れた。

 問題のダウン。志朗の連打の流れでペットサンコムが前のめりに崩れる途中、流れのなかで後頭部をかすめる際どい追撃について、一部のファンから「後頭部あかんて」「後頭部コンボダメだろ」との声も上がったが、初手で顎にガツンと二発入り、脳が揺れ相手は硬直状態で前から崩れ落ちている。

 ABEMAの実況・小出アキラアナウンサーも「最初のストレートあたりで効いていた」と証言。「右でもう効いてた」「どこが後頭部だよ、その前にアゴに入ってる」「まあダウンが確定だし妥当」とさまざまな声が飛び交った。それらの声を裏付けるスローリプレイでは、最初の右で顔面からのけぞり、“目が飛んだ”瞬間がはっきりと映し出された。

 試合後、志朗は「KO宣言していたので、KOは当たり前だなと思ってて、来年は55kgでワールドシリーズを開催して貰って。今年は60と65(キロ)が盛り上がってますけど、55は自分がトップでいるので、いい加減戦わないといけない相手もいますし、世界一を決める戦いをやって欲しいです」とマイクでトーナメント開催をアピール。具体的な選手名は挙げなかったが、同階級のライバルを倒しての制覇への意欲を語った。

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