東京都だけがリッチになる背景
「東京都だけがリッチになる背景の一つに“制度の限界”がある。それぞれの自治体が標準的な行政サービスを行うために必要な額というものが決められていて、足りない分は国からの地方交付税で補われる。これをもらっているところを『交付団体』、もらっていないところを『不交付団体』と呼ぶのだが、今、不交付団体は東京都だけだ。地方税の税収が増えると、交付団体の場合は、その多くが地方交付税の減額分に回ってしまう。つまり、税収が増えても、その分を自由に使えるわけではない。一方で、不交付団体の東京都はもともと地方交付税をもらっていないので、地方税が増えれば、使えるお金はほぼそのまま増える。このように、制度として、税収が増加する局面では交付団体と不交付団体の差が開くという構図になっている」
「もう一つが、“経済の構造の変化”。中小企業も含めて、東京都に企業の集中が進んでいる。特に、規模の大きい企業ほど東京都に集中する傾向が強まっている。当然、法人からの税収も東京に集中することになる。さらに、東京都のみに納税している企業からの税収が大きく増加している。たとえば、経営コンサル、ECサイト運営業といった業種だ。こうした企業は、東京都以外に支店がないので、東京都以外には税収が入らないということになる。商品を買う人は東京都以外に住んでいるのに、企業の売り上げは東京に入り、税収も東京に入る。さらに、フランチャイズ事業の進展もある。コンビニ、外食業などのフランチャイズは本社にロイヤルティが入る仕組みになっている。これも東京に税収が集中する要因と言える」
━━何が問題なのか?
「総務省の検討会メンバーであり、地方の税財政に詳しい関西学院大学の上村敏之教授は、『税収の話にとどまらない問題』だと指摘している。『放置すれば東京に人材が集中し続け、いずれは地方の人材が枯渇してしまう。そうなれば、いずれは東京自身が持続可能でなくなる』と懸念を示していた」
━━これを是正しようという動きはあるのか?
「格差の問題は以前から問題視されていて、2008年以降、何度か制度の見直しがされてきた。しかし、税収が増えてきて、東京都とそれ以外の差は、制度の見直し前と同じぐらいに再び拡大している。総務省は有識者らによる検討会を開いて、7月以降、格差の原因などを分析する議論を集中して行っている」
━━今後、どうなっていくのか?
「見直しの可能性があると見ているのは、『格差是正の制度をさらに強化する』。ただ、既に是正の制度は取り入れられているので、できることには限りがある。もう一つは、『新しい制度の導入』。たとえば、今、固定資産税には格差を是正する仕組みが入ってない。韓国では一定の基準を超える不動産に税金かけ、地方に配っている。こうした事例が参考になる」
「今月中旬にも総務省の検討会が分析結果などを取りまとめる。まずはここが直近のポイント。取材を通じて、このまま手をこまねいていてはいけないという各自治体や政府の思いを感じた。東京都民もそうでない人も、すべての人に関わる問題なので、今後の議論の行方に注目してほしい」
(ニュース企画/ABEMA)

