■日本人に求められる「セルフメディケーション」
維新が掲げている4兆円の削減案は、「OTC類似薬を医療保険の対象から外す(効果は1~数兆円)」、「全国150万のベッド数を11万減らす(効果は1兆円)」、「年齢にかかわらず収入・資産に応じて医療費を負担する(将来的に高齢者も3割負担に)」といった内容だ。
作家で維新の参議院幹事長である猪瀬直樹参院議員は、自民、公明との3党合意を取りまとめた。「日本は医薬品の生産側が強く、消費者側が非常に弱い。日本は社会主義国家的なところがあり、常に生産側が優位になっているが、物事は『利用者に役立つか』で見る必要がある」。
そして、「OTC類似薬は薬局で買えるような薬ばかりだが、『医師の処方箋がないと買えない』となると、大した病気でなくとも診察してもらうことになる。そうなると、診察費やあらゆる薬で、クリニックがもうかる構造ができる」と、現状の問題点を指摘する。
「ふらいと先生」こと新生児医・小児科医の今西洋介氏は、「世界の流れとしては、賛成せざるを得ない。アメリカでもOTCが普及し、市販薬の価格もかなり安い。市場作用が働き、求めやすくなったので、そうした方向に行けばいい」と感じている。
一方で「95%が反対というアンケート結果もある。持病のある人や、社会的弱者の場合には、負担が大きくなるという指摘も、一部の専門家から出ている。そのあたりの一時的なサポートは必要になるだろう」とした。
WHO(世界保健機関)による“セルフメディケーション”の定義は、「自分自身の健康に責任を持ち、軽度な身体の不調は自分で手当てすること」で、厚生労働省は「国民の自発的な健康管理・疾病予防の取り組みの促進・医療費の適正化にもつながる」としている。「風邪かなと思ったら栄養ドリンク剤を飲んで早めに休む」「頭痛などの場合、市販薬を飲む」「ケガをしたらばんそうこうを貼る」などが、その例だ。
猪瀬氏は、現状の医療現場における課題として、「医師と薬剤師、看護師、理学療法士などのタスクシフトができていない。日本の薬剤師は、人口比で世界一の数がいる。相談すれば解決できる問題はいくらでもあるが、日本は縦割りのギルド(職業別組合)になっていて、全部開業医の所へ行く」と語る。
今西氏は、医師の視点から「薬を出すことだけが僕らの仕事ではない。情報を得ながら、診断を付けることが大事だ。ただ、日本はあまりにもセルフメディケーションの意識が低い。とはいえアメリカのように、セルフメディケーションが進みすぎて重症化するパターンもあるため、バランスは必要だ」と話した。
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