■日本の防衛産業が世界から遅れた数々の理由

アメリカからの装備品輸入
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 日本が遅れた要因としては、どのような点が考えられるのか。清谷氏は「戦争したことがない国の装備は、やはり売れない。イスラエルやアメリカの兵器が売れるのは、実際に戦争して、その能力がわかっているからだ。加えて、日本の装備は、下手すると1ケタ高い。例えば、日本のC-2輸送機は、アメリカのC-17の5〜7倍の維持費がかかる。P-1哨戒機も、非常に稼働率が低いと会計検査院が発表し、性能も結構怪しい」とした。

 ヘリコプターを例に出して、「言い方は悪いが、“子ども部屋おじさん”と同じだ」と解説する。「民間も行政も外国製を使用している。国内メーカーのものは売れていないが、防衛省のお金で食えている。防衛省という親がいて、40〜50代で親に食わせてもらっている“防衛産業おじさん”の体質を治さなければいけない。ただ防衛省は、事業の再統合にほとんど動かない」。

 立憲民主党前代表の泉健太衆院議員は、「防衛省はスタートアップ企業を集めて展示会を開いている。そこでドローンや通信などの新技術を取り入れているが、ウクライナの戦いを見ても、大物の兵器だけでなく、安価なものを大量に使うのが主流だ。それに日本も対応しなければならない」と述べる。

 ただ清谷氏によると、「スタートアップを援助するという掛け声は大きいが、事実は異なる」のだそうだ。「防衛産業の利益率を8%から13%に上げたが、13%にするためには、過去の実績を書類で提出する必要がある。中小企業やスタートアップには恩恵がなく、既存の大企業ばかりメリットを得ているのが現実だ」。

 こうした背景から、「海外市場で痛い目を見るべきだ」と主張する。「『すごいでしょ』と言っても買ってくれない経験が勉強になる。トルコや韓国は、この四半世紀で輸出市場の能力が上がった。初めは箸にも棒にもかからなかったが、売れない理由を『値段なのか、性能なのか、メンテナンスサービスなのか』と学んだ結果だ。ところが日本は、そうしたことをやらなかった」。

 防衛産業をめぐるハードルとして「議論がかみ合わない」点もあるようだ。「エビデンスを元に、ファクトをベースに『何ができるか』を話し合わなければいけないのに、『お気持ち平和主義』になってしまう。ドローン分野では約20年前、日本が先進国だったが、総務省は遠くにドローンを飛ばすための周波数帯を使わせてくれなかった。東日本大震災で、日本のドローンが飛ばなかった理由の一つがそれだ」。

 中谷氏は「国を守るためには、国民の理解と協力がいる。自衛隊や米軍の訓練を実力阻止する人もいるが、『自衛隊は万が一のために訓練しないと、いざという時に機能しない』と理解してほしい」と呼びかける。「装備には“戦争するため”でなく、“国を守るため”に必要なものもある。レアアースのように意地悪されると、自国で作れなくなる。日本周辺には潜水艦がうろつき、領海・領空侵犯の回数も増えてきた。その際に阻止できるものが必要だ」。
(『ABEMA Prime』より)
 

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