ジャーナリストの青山和弘氏は「石破氏はこの戦後80年の時に総理大臣を務めたということに対して、意気に感じているというか使命感みたいなものを持っていて。ただ、その前の各総理の談話を否定するようなものは出したくないという考えの中で、なぜ戦争を止められなかったかについては、それまでの談話ではちゃんと語られていなかったので、1つレガシーを残したいという思いがあったのだろう」と分析。
さらに、「ただ1つ、この中の『政治家の情緒的な判断が戦争に導く1つの理由になった』というところ、これは今の政治はそっちの方向に向かっているのではないかという声もあるが、石破氏はどのように考えているか」と質問を投げかけた。
これに石破前総理は「これも一言で言うのは大変難しいが、当時の陸軍、海軍、日本政府だって、アメリカと戦争して勝てるわけがないというのはみんな知っているわけでしょ。だって、国力が10倍違うんだから。総力戦なんだから。勝てないとわかっていてなんでなったのかをきちんと分析しなきゃいけない」と応じた。
「大日本帝国憲法には、元老という存在があって、それがいろいろな調整をすることで国を回していたわけで。元老いなくなっちゃいました、西園寺公望も死んじゃいました。そうすると意思決定というものが、大きな声とか勇ましい声に引きずられちゃうことがあったわけだ。例えば、猪瀬直樹さんが『昭和16年夏の敗戦』で書いておられるように、あらゆる艦長、陸軍、海軍、日本銀行も、30代の人たちが集まって『絶対に勝てません』と言った時に、東條英機陸軍大臣は『君たちの研究は立派だが、昔から言うじゃないか、戦は時の運なのだ、やってみなきゃわからないのだ』みたいな話をした。『負けますからやめましょうね』という研究はボツになっちゃう。『戦は時の運』という一言で。みんな東條さんが悪いというつもりは全くないけれど。
『人間たまには清水の舞台から飛び降りる勇気も必要だ』、清水の舞台から飛び降りると大体死ぬ。その勇気も必要だという時に誰も反論しない。これって怖くないですかということだ。安倍(晋三)さんの70年談話の中に、『太平洋戦争に突っ込んでいった日本の政治システムはそれを止められなかった』とさらっと書いてある。なぜ止められなかったかを検証して、今の日本は大丈夫かを検証するのは、今の時代の政治家、少なくとも内閣総理大臣の責任だと思った」(石破前総理)
「政治家は感情に引きずられてはいけない」
