ジャーナリストの青山和弘氏が解説する。「日本は基本的に“専守防衛”で、自分から攻撃してはいけない国だ。相手から何かやられる時だけ攻撃できるため、何かやる時には“事態認定”が大事になる。『この事態は何だ』と法律で認定しないと、自衛隊は出動や攻撃ができない」。
自衛隊が動く条件として、「映画シン・ゴジラの時はゴジラが敵なのか、国じゃないし、武力なのか、生き物でしょ、みたいなところで混乱するシーンが描かれた。一番簡単なのは“武力攻撃事態”で、日本が攻撃された時、防衛のために出動する。これは構わないとされている」と説明しつつ、「ただ、存立危機事態は、自分は攻撃されていないが、集団的自衛権を使って『どういう時に自衛隊が防衛出動できるか』を決める、極めて複雑な問題だ」と話す。
高市総理が今回行った国会答弁は「(中国が)戦艦を使って武力の行使も伴うものであれば存立危機事態になり得る」というものだった。これは岡田氏が何度も聞く中で出てきた言葉だが、「非常に荒っぽい言葉であることは間違いない。この前のやりとりでは『台湾が(中国に)海上封鎖されて、それを解くためにアメリカ軍が来て、それを防ぐために中国が武力行使する場合』と言っている。高市総理の答弁では(中国が)戦艦を使って武力の行使も伴うものであればという部分に『アメリカ軍』の言葉が入っていない。ここが今回の問題が複雑になっている理由のひとつだ」と指摘する。
青山氏によると、存立危機事態の定義には「何重にもブレーキがかかっている」という。「(条文にある)『密接な関係にある他国』はアメリカを想定しているが、アメリカが攻撃されただけではだめだ。例えば北米でアメリカが戦争に巻き込まれても、『我が国の存立が脅かされ』ているか、『権利が根底から覆される明白な危険がある』かに、当てはまらないと思えば、日本の自衛隊はアメリカまで行く必要はないとなる」。
この前提のもと、答弁を読み直すと、「『台湾に対して武力を行使すれば、存立危機事態になり得る』と誤解している人もいるが、高市総理は『米軍が来援し』が念頭にあったのだろう。『米軍が台湾有事に来て〜』も1つのたらればで、アメリカは『来る』も『来ない』もはっきり言っていない」という。
その上で、「もしも米軍が来て、そこに中国が武力の行使を伴えば、台湾で米中戦争が起こるため、その時は我が国の存立が脅かされる。隣の与那国島に来るかもしれないし、ミサイルが飛んでくるかもしれない。米軍が来援すれば、中国が日本中の米軍基地をターゲットにするかもしれない。そうなれば、日本人にも『明白な危険』がある事態になって、存立危機事態になり得るという話だ」と解説する。
「高市総理は、ここまでエスカレートしたら確かに存立危機事態になり得るよね、という一般的な解釈としては常識的な事をいったのだが、これまで、ここまではっきり言った総理はいなかった」ことから、「中国は『台湾有事に日本が自衛隊を出してくるのか。ふざけるな』という話になってしまった。答弁の言い方がわかりにくかったのも一つの原因だ」との見方を示した。
しかしながら「密接な関係の国」が、アメリカではなく台湾を指していると認識している人も多いのでは?と質問されると「海外では『台湾有事があった時に、日本が(台湾を)助けに行くと言った』との報道もあるが、これは存立危機事態ではありえない。日本は『台湾は国ではなく、中国の一部だ』という、“一国二制度”の考えを尊重しているためだ」。
あくまで今回の答弁は、「アメリカと中国の間で、台湾海峡をめぐるつばぜり合いが起きた時に、米軍を支援し助けるために、日本も自衛隊を出動し武力攻撃を行うことが想定されるかもしれない」ということだった。「中国は理解していると思うが、言い方があいまいだ。『米軍が』などと言わず、『台湾の問題に首を突っ込むのか』といった怒り方をしている。そこは高市総理が、もう1回ちゃんと説明しなければいけなかった」。
問題の答弁に対しては、岡田氏が「誰に武力攻撃した場合を言っているのか」と聞き返したが、高市総理は「話をはぐらかした所がある。その前段階で『米軍が来援し〜』と言っていたが、議論が深まらなかった。米軍が来た前提だとしても『存立危機事態が台湾有事の際に発動する』と言えば、(総理が明言する)初めての答弁だったのは間違いない。ただ、ここまで変な誤解を含めて広がることはなかったかもしれない」と解説した。
(『ABEMA的ニュースショー』より)
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