そもそも“必要経費”と“家事費”って?何が違う?
政府は過去、ベビーシッター代の控除について検討したこともあった。2015年の自民党の税制調査会では、当時の安倍政権が子育て支援を重視していることから、ベビーシッター代を経費として認めることを将来の検討課題と発表された。しかし、これ以降立ち消えになってしまったという。
これについて中野氏は「税制調査会に参加していた男性らは、ベビーシッターを使ったことがありますか?と思ってしまった。立ち消えになった理由はわからないが、女性が子どもの面倒を見ればいいというような世界の人たちで話していたのではないか」と私見を述べた。
そもそも“必要経費”とは、所得を得るために必要な支出のこと。そのため所得から控除が可能となる。一方、“家事費”は個人の消費生活上の支出とされているため、控除できない。つまり保育料はプライベートな支出とみなされ、“家事費”に含まれているということだ。これに対し、中野氏は以下のように語る。
「公私分離規範みたいな言い方をするが、パブリックな場とプライベートの場は分けるべきだという規範がすごく強い。子どもを預けることによって仕事ができているわけだが、子どもは専業主婦のお母さんが見ればいいという前提で作られているので、必要経費にはならないし、子ども=プライベートとみなされている印象」
「リモートワークが浸透してきたが、それ自体も子どもが近くにいたら仕事ができないということも、想像力が湧かない人たちが制度を作っていたりすると、雑に考えられてしまう。2020年にベビーシッターで性犯罪が起こった取材もしたが、その話を取り上げるだけで『一部の人の話でしょ』『だから親が家で子どもを見ればいい』という方に話が行ってしまう。意思決定をする、あるいは制度を作る人たちが、育児をしながら共働きすることをイメージしていないのかなという印象」
では、今後の保育料はどう扱われるべきなのだろうか?西村税理士事務所・西村真依氏は補助金を提案する。「働きながら大きく稼ぐのは難しい女性も多く、元々赤字の確定申告など、控除の恩恵が無いケースもある」ためだという。一方、戸田弁護士は“控除”を提案。理由として「補助だと自治体によって取り組みや金額もバラバラで地域差が出てしまう」と説明した。
こうした現状を踏まえ、中野氏は「企業の方も、例えば家事代行やベビーシッターを福利厚生として補助するなど、家の環境をプライベートと切り捨てないで、仕事をするためにという認識が広がるといいと思う」と提唱した。
(『わたしとニュース』より)
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