■ほとんど見えない「弱視」の世界

鈴木我信さん
拡大する

 鈴木さんは、先天性の「前眼部形成異常」という指定難病を患っている。視力が「0」の左目には義眼を装着。「0.02」の右目は疲労が溜まると視界がぼやける。小学校の時、音読をするにもタブレットが必要で「音声の読み上げを聞きながら自分で話していた」と振り返る。細かい文字は、かなり拡大しないと認識できず、人の顔もよくわからない。ただ、スマホの拡大機能を使って人の顔を見るようなことも「それは失礼だから」としないと決めている。

 中学校からは国立盲学校で寮生活。「勉強は人の何倍も時間がかかった」が、大学は難関で知られる慶応義塾大学に合格し、現在はSFC(湘南藤沢キャンパス)に通う1年生だ。動画を作るなどして自身の経験を発進、弱視に関する啓発活動も行っている。

 全く見えない「全盲」とは異なり、ほとんど見えない「弱視」だからこその悩みがある。その一つが勘違いだ。電車内でスマホの拡大機能を使っていると「盗撮だと間違えられる可能性がある」。また、道を歩いている際に鬼ごっこをしている小学生が「あの人は見えない人だから、ちょっと道を開けようというようなことを言ってくれた」が、道に迷っていたこともありスマホで地図アプリを見ると「あの人、見えてるじゃん」と周りの子どもから言われてしまったという経験もある。子どもたちにとっても、弱視という状況はなかなか理解しがたいものだ。

 また明るい日中はいいが、夜になるとさらに視界は悪くなる。「夜だと特に見えづらくて、本当に全盲に近い状態になる。車止めとかも、道路と同じ色のコンクリートとかだと、同化してしまってわからない」。

■自ら支援アプリを開発
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