■日本とアメリカ、大学の違いは「層の厚さ」

野村泰紀氏
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 バークレー・ラインウェバー理論物理学研究所所長・野村泰紀氏は素粒子・宇宙論が専門。著書に「95%の宇宙解明されていない“謎”を読み解く宇宙入門」などがある。東京大学理学部物理学科を卒業した後、2000年に大学院に進み博士課程を修了すると、2003年にカリフォルニア大学バークレー校教授に。その後、現職に至る。アメリカを拠点にしてから、もう25年以上にもなる。

 日米の大学による研究レベルの差はどれほどのものか。「トップの大学は日本もアメリカも同じ。ただ人口比以上に、層の厚さが違う。私は夏場の2カ月は毎年、理化学研究所にいて、そこには日本の優秀な科学者がたくさんいる。だから、日本では研究ができないということもない」。

 それでもやはりトップレベルの科学者が集う海外に渡る経験は必要だと勧める。「若いうちに行った方がいい。すごく業績がある人は別だが、若くないと『ちょっと行きたい』では行けない。若いうちに行って、世界がどう動いているか、どんな人間がいるのかを見てから、日本に戻ることは絶対に意味がある」。

 野村氏が感じるのは、トップグループではない大学のレベルの差だ。「トップクラスであれば、研究費もそんなに違いはない。ただしアメリカはトップ6大学のようなところが常に競っていて層が厚いのに、日本はそこから急速に(レベルが)落ちてしまう。またアメリカでは、トップの研究者がいろいろな大学にいるが、日本はトップクラスではない大学が(優秀な)研究者を採用しない」。アメリカでは多く大学で優れた研究者が育つ環境がある一方、日本ではごく限られた大学になることを指摘した。

 近畿大学情報学研究所所長・夏野剛氏は、アメリカでは大学だけではなく研究者同士の競争も激しいと述べる。「日本だと助手、助教授、そして教授になってずっと同じ大学にいるようなことがある。ただアメリカでは常に競争だ。その分、(大学内で)負けた人でも違うところで拾われ、敗者復活がいくらでもある。日本の大学は教員もずっといる人を切れないので、逆に新しい人のチャンスもない。流動性が低くて競争が起きないために、論文もあまり出さない」と、日本の大学の停滞感について言及した。

■海外の研究者で繰り広げられる激しい競争
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