■日本の研究者、どこで活躍すべき?

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 今後、日本の大学や研究者たちは、どのように活躍していくべきなのか。野村氏は、改めて若いうちに海外で挑戦し、その上でそのまま滞在するもよし、帰国するもよしという選択肢を持つことを推奨する。「若いうちに世界を見ることは、絶対にした方がいい。それで残れる人、残りたい人は残ればいいし、日本に帰ってきて貢献したい人はそうすればいい」。また、その動きを日本から見て“頭脳流出”と考えすぎる必要もないと語る。「海外に行った後、全員が帰ってきてしまったら(現地と)直接のパイプがなくなる。例えばアメリカがこの先、ずっとトップにいるかわからないが、もしそうだとしてその場に日本人がいることのメリットはすごく大きい」とした。

 一昔前とは異なり、ネットが普及した今では発表された論文は、その日のうちに全世界の研究者が目にすることができる。それは日本でも変わらない。ただし論文を書いている現場では、今どの研究者がどんな論文を書いているかがリアルタイムで把握することができ、既に違う論文に向けて動き出している。このタイムラグが大きいことを、アメリカで活躍する野村氏は熟知している。誰一人、日本人が海外から引き上げてしまえば、最先端の研究を進める“インナーサークル”の輪に、ますます入れなくなってしまうと危惧した。

 また島袋氏も同様の意見を持つ。「海外に挑戦することで、コネクションを作ったり、最先端でどういうことをやっているかを学んで、それを海外で活かすのか、あるいは日本に戻るのかという選択肢はありだと思う」。また日本には優秀な研究者が多くいるにも関わらず、安定しないポスドクという立場にいるケースも多いことに触れた。

 「そういう人たちは海外に行ったら、テニュア(自由な教育研究活動を保障するための終身在職権)のポジションを取れるぐらい優秀。でもなぜ海外に行かないかといったら、それは家族が一番の問題。研究者であっても、その前に人でもあるので、ワークライフバランスなども考えないといけない。そう考えると、一概に海外に行った方がいいとも言い難い」とも語った。

 科学ジャーナリストの須田子氏は、日本の大学における研究者の待遇改善が必要だと訴える。「日本では、本当に優秀な人が安定したポストに就けないことが非常に大きな問題だ。取材した理化学研究所のケースでも、4年や5年の研究で億単位の外部資金を取ってくるような人、それだけ成果も出してるような人でも『10年だから』と機械的に雇い止めにあってしまうようなことが、何十人もあった。能力があって意欲もある、日本で研究生活を続けたい、そういう人が安定したポストにつける環境を作るのが大事だ」。
(『ABEMA Prime』より)

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