依頼を受けた1件目の収穫場所に到着すると、柿木さんは「一応着けないと怖い」と鈴を身に着けながら、クマよけスプレーを携帯。いままでクマに遭遇したことはないそうだが、現場には箱罠が置かれており、「ここクマが出たみたいで、まだいるかもしれないから一応置いている」その時の写真を見せてもらうと、子グマが木に登り、柿を食べている姿がとらえられていた。

 木の根元を見てクマのフンがないかを確認した柿木さんは、今度は爆竹に着火。「音を出すので、クマに『いるよ』っていうのもそうですし、自分が安心する」とコメント。「やっぱり怖い?」という質問には「めっちゃ怖いです本当に」と本音を吐露した。

 いつクマに襲われてもおかしくない、危険と隣合わせの収穫。ここでは36キロの柿がとれた。「まだ少ないほうです」と多いときは1本の柿の木で100キロ近い柿が収穫できるという。

 依頼者に柿の木を伐採しない理由を尋ねると「両親はもう亡くなっているので。両親のことを思い出す木だから」とコメント。柿の木は秋田県民にとって身近なものだという。庭に植えた柿を収穫して軒先に吊るし、干し柿にして保存食に。秋田の厳しい冬を乗り越える先人の知恵だ。しかし高齢化や過疎化で多くの柿の木が放置されているのが現状だ。

 柿木さんは「もともと広島から移住して、柿の木の多さにビックリして。誰も(柿を)とらなくて非常にもったいない。それがクマを呼んでいるとかいろいろな問題を引き起こしていた。名前が『柿木』なのでやり始めた」という。

“放置柿”の収穫費用は無料、柿の加工品を販売
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