■おこめ券、配布の是非は
11月21日に閣議決定された「強い経済」を実現する総合経済対策は、総額21.3兆円規模で、コロナ禍以降最大の補正予算規模となった。うち2兆円が、重点支援地方交付金の拡充に使われ、各自治体が地域のニーズに応じ、きめ細かい物価高対策に充てる。「家計支援枠」として、水道料金の減免など、1世帯当たり1万円程度を設定。また、おこめ券、電子クーポン、プレミアム商品券など1人3000円程度の「食品価格高騰特別加算」を設けている。
「おこめ券」は新たに始まる金券ではなく、すでに存在している。主に「全国共通おこめ券」(全米販)と「おこめギフト券」(JA全農)の2種類があり、1枚500円で、60円の印刷経費を引いた440円分のお米などと交換可能だ。有効期限なし、お釣りは出ないといった特徴があり、お米(パックご飯・弁当含む)と一緒なら日用品に使えるお店もある。
東京・台東区では、約14万世帯におこめ券を配布した。18歳以下の子がいる、もしくは3人以上世帯は8800円分、それ以外の世帯は4400円分が配られる。「全農おこめギフト券」関連補正予算として約9.5億円を計上し、内訳は、区の事務経費(郵便簡易書留など)が約1.4億円、おこめ券購入費が約8.1億円(うちJAに約1億円、1枚60円換算の場合)。つまり、2.4億円が経費などに使われ、区民への効果は約7.1億円となる。
元農水官僚で、現在は自民党・農業構造転換推進委員会で委員を務める、進藤金日子参院議員は、「おこめ券配布はあくまで、国が一律に行うのではなく、地域の実情に精通している自治体の判断になる。すでに約30の自治体が、おこめ券をやっているが、それはマストではない。地域に応じて、電子クーポンなどにより、物価高騰に苦しむ人を支援していく」と説明する。「コメが欲しいが買えない人もいる中で、一つのオプションとして用意している。選ぶも選ばないも自治体の判断だ」。
同じく元農水官僚で、キヤノングローバル戦略研究所研究主幹の山下一仁氏は、「いまコメの価格は5キロ4200円。年間50キロ食べて、4万2000円払っている。1人3000円をもらってどうするんだ」と批判する。「政府は減反により生産を減少させる代わりに、米価を市場価格より高く設定している。その補助金に3500億円を使い、4000億円(特別加算)かけて安くするのはマッチポンプだ」。
そして、「減反をやめれば価格は下がり、1000万トン生産できる。それを減反で700万トンに下げているから、今回のようなことが起きた」としつつ、「安全保障上も問題だ。世界のコメ生産は、1961年の3.5倍に増えたが、日本だけは4割減っている。日本文化の象徴であるコメを減産するとは何事か」と語る。
進藤氏は減反政策について、「2018年から『行政による生産数量の配分は行わない』と転換したが、3500億円は『実質的には転作奨励ではないか』と言われていて、実質的に減反が続いているとの指摘がある」と解説する。
その上で、本人は「転作奨励金の廃止論者だ」と明かす。「税金でコメを生産させないようにして、米価を高くした結果、消費者が払うという構図に理解が得られない。農家は今年69万トンを増産している。他の作物に転作する前に、食料自給率45%を確保する必要があるため、むしろ弱っている生産現場を支援する方向にすべき。奨励金は見直す方向で、しっかり議論していくべきだ」。
山下氏は「8年前にロサンゼルスで市場調査すると、日本米は現地産の8倍程度の価格だった。しかし、去年行くと日本米が棚から消え、韓国米に置き換わっていた。日本米の輸出が減少して、代わりに韓国が市場を取っている。減反をやめて供給量を増やし、価格を下げればもっと輸出できるのに、もったいない」とのエピソードを話した。
■ひろゆき氏が考える日本のコメ文化
