菊地さんは、今から38年前の17歳の時、父親の事業失敗による借金5000万円の返済のためマグロ漁船に乗った。

 そのリアルな体験として「乗ったらやっぱりめちゃくちゃ厳しかったですね。しょっちゅう高波が来るんですよ。高波を浴びながら揺れますんで、どこかにすがりつきながら仕事をして。台風の中でそれをやってるような感じ。だからびっくりしましたね。こんなことできないと思って」と当時を振り返る。

 揚縄、投縄、仕掛けの取り付け、氷の砕き方、その当時、命懸けで働く海の男たちは厳しく、ヤンチャな菊地さんですら耐えるしかなかった。その理由はひとつ、そこは海の上だからだ。陸と違って、仮に仕事や人間関係が嫌になっても逃げるところがなかった。それが一番辛かったと振り返る。

「もう地獄ですよね。そういうもんだと思って慣れるしかない」(菊地さん、以下同)

12時間労働も当たり前、睡眠4時間の日も…
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