■デジタルにない、アナログ広告ならではの強みとは?
経済評論家の鈴木貴博氏は、きぬた歯科が成功した理由として、「大規模なマス広告として機能したこと」「突き抜けて目立つデザインであること」「競合の参入を防いだこと」をあげる。
また、「インプラント治療は高額。だからこそ、ローカルなはずの歯医者でも広域のマーケットが狙える。広域になると、テレビより看板のほうがマス広告として効く。インプラントを初めてやる時に『きぬた歯科かな』と思ってしまうわけだ。競合は増えているが、1番手の認知は圧倒的に強い。同じようなデザインでも、2番手、3番手は効果が少なくなる」と解説した。
中島氏は「看板づくりを勉強していくうちに、きぬた歯科にたどり着いた。社長からも『きぬた歯科って知っているか』と聞かれた。看板ビジネスをやっていれば、大体きぬた歯科にたどり着く」と話す。
一方、鈴木氏はサンコックの看板も「新しくて面白い。やってみたくなる。テレビでも『雑巾掛けで8分』を検証したが、その後に『雑巾掛けのプロでないと行けない』と注意書きが加わった。この看板はインタラクティブなところが新しい」と評価した。
文筆家で情報キュレーターの佐々木俊尚氏は、「デジタル広告は限界に達している。1980〜1990年代の広告業界は、コピーライターの糸井重里さんのように文化的存在で、ソニーや日立もブランド広告を打っていた。しかしデジタル広告は、ひたすら露出すればいい世界だ」と時代の流れに触れる。「ウェブメディアの記事を読もうとしても、広告が次から次へと出てきて、どこをクリックすれば消えるかわからない。オンラインで『広告は罪』となっているからこそ、リアルの広告が新鮮に見えるのではないか」。
鈴木氏は「アイボール(目玉)シェア」という用語について話す。「スマホ使用時間が平均4時間で、16時間起きているなら、アイボールシェアは25%程度しかとれていない。残りの時間は、ぼーっといろんなものを見ている。アナログは時代遅れに見えるが、アイボールシェア的には半分程度の力を持っている」と指摘する。
さらに、アナログ広告は「どうすれば新しくなるのかの戦い」なのだそうだ。「バニラの車体広告は画期的だった。トラックから『バーニラ、バニラ』という曲を流しながら、グルグルと回る。新しいことを考える戦いは、無限に続いていくのだろう」とした。(『ABEMA Prime』より)
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