■高所得者になるほど金融所得が増加

1億円の壁
拡大する

 東京財団上席フェローで税理士の岡直樹氏は、「課税強化は今年の1月から始まり、来年の3月に申告するが、その前に改定案が出たのは驚いた。『“1億円の壁”を超えると、税負担率が下がるのはずるい』と言われている。なぜ下がるかと言えば、金融所得の税率が低いからだ。現行制度は、30%までは追加課税しているが、世界的にもない先進的な仕組みだ」と説明する。

 所得税負担率を30%に定めたことは、「なかなかいいセンスだ」と評価する。「1億円の壁のてっぺんが、約25〜30%の税率。そこに合わせてきた。(控除額を)3億3000万円から1億6500万円に半減させるのは、それなりに説得力がある」。

 投資家のテスタ氏は、6億円に引き下げられた場合、「課税強化の対象に入る年もあるが、投資の世界は勝ち負けがあるため、確実に入るとは限らない」という。その上で、「不公平と言われるが、1億円の25%は2500万円、100億円の15%は15億円だ。金額ベースでは、それだけの税金を納めてくれている。税負担率は下がっても、負担額は多くなっている」と読み解く。

 また、「ガソリン減税は、車を持っていない人からすると『自分には関係ない』となる」ことを引き合いに出し、「年収6億円以上は2000人程度しかいないとの試算もあり、少数が何を言っても届かない。僕が株を始めた20年前は10%だったが、今は所得税と住民税を合わせて35%だ。もし『消費税が10%から35%になる』となれば、自分ごとになって違う意見になるかもしれない」と話した。

 税制の問題として、「総合課税の場合、1億円もうけて50%取られても、翌年1億円負けたら、通算の利益はゼロになるが、税金は5000万円取られる。株の世界はプラスもマイナスもあるため、総合課税だと納税額がすごく高くなる」と説明する。

 そして、「『貯蓄から投資へ』とやってきたのに、リスクが見えることで『貯蓄の方がいい』となる」おそれを懸念する。「投資は夢がある世界だ。金融所得課税も、最初は一律で上げる議論になっていたが、それには反対だった。個人的には増税になるのは嫌だが、どちらかといえば、高所得者だけを対象にすることに賛成する」。

■投資にも回らない資産をどう動かすか
この記事の写真をみる(4枚)