「全部自己責任、自業自得」という心ない罵倒を浴びせられ、守られるどころか切り捨てられた結果、莉子は「解離」という心理状態に陥る。「段々、他人事に思えてきて……悪い夢だったみたいに現実感がなくなって、なんだ、私、全然平気じゃん、って」。

 これは、耐え難い現実に直面した心が、自分自身を守るために「現実感をなくす」という防衛機制だ。莉子は当時の心境を「あの時の私は、自分が生きてるのか死んでるのかわからなかった」「何をしても、何にも感じなかった。人間のふりして動いてるだけで、心は空っぽでした」と、壮絶な言葉で表現している。

 誰にも苦しみを打ち明けられない根深い孤独の中、莉子は警察への相談を検討するも、「相手にされないと思って」行けず、泣き寝入りを選択する。「周りからは、普通に見えたと思います」という言葉が、表面上の平静と、内面の深刻な乖離を物語る。孤独に苛まれた莉子は、「他人事」と自己暗示をかけ、時間と共に事件を思い出すことも少なくなり、全てを心に蓋をして日常を過ごしていたのだ。

抑圧された怒りが爆発、人生を取り戻すための告発へ
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