■4つの案を解説

足立康史参院議員
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 「高市案」は、伝統的な戸籍制度を最も重視する案だ。足立氏は「戸籍には指一本触れず、住民票などで旧姓を通称使用できるようにし、それに法的効力を持たせる」ものだと解説する 。 この案では、旧姓を併記することで、社会生活上の不便を解消しようとする。ただし、足立氏は「1人の人間が2つの氏(ラストネーム)を持つ『ダブルネーム』の状態になる。これは世界的にも珍しく、社会的にどうなのかという議論は残る」と指摘した 。

 高市案のダブルネーム問題を回避するために考案されたのが「維新案」だ。この案については、「旧姓使用を選択したら、人生の最後まで旧姓だけで生きてください、というものだ。戸籍には『この人は旧姓を選んだ』という注意書きをするだけにする」と説明する 。戸籍上の氏を使えなくすることは人権侵害ではないかという懸念もあるが、「旧姓を選んだ当事者にとって、戸籍上の氏は重要ではないという前提に立っている」とした 。

 「国民民主党案」は、戸籍の枠組みを維持しつつ、「選択的夫婦別姓」を実現しようとする折衷案だという。この案では、夫婦それぞれが望めば別々の氏を名乗ることができ、戸籍にも両方の氏が記載される。ただし、民法で戸籍筆頭者を決めることを義務付け、子供の氏は筆頭者の氏に統一する。足立氏は「戸籍上の筆頭者は1つに決めるという点で、伝統を相当重視している」と述べ、保守層にも受け入れられやすい現実的な案であると主張した。

  「立憲民主党案」は、個人の尊重を最も重視し、完全な「選択的夫婦別姓」を目指す案だ。戸籍に両方の氏を記載する点は国民民主党案と同じだが、筆頭者によって家族をまとめるという考え方は薄い。足立氏は「いわゆる『同氏同戸籍』という伝統的な形を変えるため、保守派の反発が強く、国会で多数を占めるのは難しい」との見方を示した 。

■「4つの案が国会に並ぶのは数十年で初めてのこと」
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