■熟年離婚 増加の背景

 約350件の離婚案件に関わった、ベリーベスト法律事務所の日原聡一郎弁護士は、熟年離婚が増加した背景として、「女性の社会進出も進み夫に依存する必要も薄れた」「財産分与への認識が広がり経済的にも保証」「離婚時の年金分割制度が確立(2007年)」「シングルマザー・ファザーも増え、世間体も気にならなくなってきた」ことを挙げる。「私が扱った事案では、子どもが大人になったことを期に熟年離婚することが多い気がする」。

離婚件数と熟年離婚の割合
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 つくしさんは、協議離婚での決定事項として、持ち家は「売れたら売却益を折半。マイナスが出た場合は元夫が全額負担」、元夫の退職金は「確実にもらえるかわからないと分与されず」、貯金は「『ない』と言われ、1年分の所得を証券で受け取る」、年金分割は「4割で合意」となった。

 つくしさんは、「財産を隠されて、『なんて人と私は25年間も一緒にいたのか』と頭にきて、さっさと離婚しようと思った。早く新しい人生を踏み出したくて、調停や裁判で長引かせたくなかった」という。しかし今となっては、「他の財産は別にいいと思うが、年金については、もらう権利があったのに手放したと後悔している」そうだ。

 2007年からの年金分割制度は、離婚した場合、2人の婚姻期間中の保険料納付額に対応する厚生年金を分割して、それぞれ自分の年金とすることができるもの。手続きは近くの年金事務所などへの請求書の提出で行い、期限は離婚の翌日から2年間となっている。

 つくしさんのように財産を隠されていたケースには、日原氏は「大前提が違うため、錯誤や取り消しを主張する場合もあるだろうが、経験上はかなり厳しい」との見方を示す。また年金についても、「国民年金はそれぞれで、厚生年金は夫のみ掛金を払っていても、婚姻期間に対応した掛金は半々で納めていたと考えて、年金受給時に計算する」というが、2007年以前については「2人で合意しなければ、基本的には分けられない」と説明した。

■熟年離婚のデメリット 男女で大きな差?
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