時計の一大生産地・スイス。2024年の時計輸出額は約4兆8000億円に上るという。機械式時計の本場・スイスで活躍する2人の日本人を、“時計の沼”にハマり、約30本の時計を銀行の貸金庫に預けている朝日新聞編集委員 後藤洋平氏が取材した。
訪れたのは、スイス北西部の町、ル・ロックル。ここは時計産業都市として2009年にユネスコ世界遺産に登録された町。そんな機械式時計の本場で活躍している日本人が独立時計師・関口陽介さん(45)だ。
「狂気です」と笑って返す
自身の時計ブランドを持っているという関口さん。関口さんが手掛けたプリムヴェールの新作は1本1600万円以上。モデルは2種類でそれぞれ10本ずつの限定品だ。注文から完成まで1年半を要し、設計から組み立て、仕上げまで全工程を自らの手で行い、とても精密な作業が施されている。
関口さん「0.3ミリに7層が入っている」
つまり、塗り・焼きが7回入っているということだ。自身のブランドを立ち上げたのは2020年。
関口さんのご自宅にお邪魔させてもらうと、高級そうな時計がずらり。「時計にすべて捧げている人…」と漏らすと「狂気です」と笑って返す。
関口さん「一般的な幸福と言いましょうか。そういうのを求めてお金をかける場所はいくらでもある。ましてや他の人が『こんなものいらないよ』というものが私の幸せ」
関口さんは2007年に23歳でスイスに渡り、専門的な教育を受けなかったものの独学で働きながら学んだという。
関口さんが機械式時計に魅了されたのは高校時代に友人から動かない古く大きな時計をもらい、分解して修理しているうちに仕組みに感動したことがきっかけだという。
公務員として国際時計博物館に勤務

