
富士山の美しさに魅了され、日本で生活することを決めたイタリア人の女性がいます。5カ国語を操り人手不足に苦しむホテル業界で大活躍です。夢に向かって奮闘する彼女の姿を取材しました。
日本大好きイタリア人 好きな漢字は?
日本語学校の先生
「皆さんはいつも朝ごはんを食べますか?エレさん、きょうの朝ご飯は何ですか?」
エレさん(25)
「きょう、パンやチョコレートやコーヒーなどです」
先生
「朝ご飯、チョコレートなんですね?」
エレさん
「はい。甘いもの、朝ご飯の時、甘いもの好きです」
都内の日本語学校で、先生からの質問に答える女性。イタリア人のエレさんです。さまざまな国の人たちと一緒に、日々、日本語の勉強に励んでいます。
先生
「エレさん、国はイタリアですね?イタリアでワインをよく飲みますか?」
エレさん
「はい、よく飲みます」
先生
「どれくらい飲みますか?」
エレさん
「えー、1週間で1回飲みます」
先生
「その時、何本くらい飲みますか?」
エレさん
「2本は飲みます」
来日から1年も経っていませんが、日本語での会話はスムーズ。先生や生徒からも一目置かれる存在です。
日本語学校の生徒
「(エレさんは)頭が良くて、 いつも頑張ります。 そして、面白い」
日本語学校の先生
「エレさんは、元気に発言をしてくれて、クラスの雰囲気を良くしてくれます」
「(Q.日本語の上達は?)入学した時から日本語が上手だなと思っていましたが、最近とっても上手になったと思いますよ。そして、今は会話は全部日本語でしています」
「(Q.イタリア語と英語とかも一切使わずに?)はい、私と話す時はいつも日本語です」
去年1年間に日本を訪れたイタリア人はおよそ23万人に上り、過去最高を記録。今年に入っても、1月は前年を30%近く上回り、増加傾向にあります。エレさんは、今年4月に来日しました。
「一番好きは言葉、『前』」
「(Q.なんで前?)教科書の漢字見て『前』かわいいと思いました」
お気に入りの言葉は、「前」と「楽」。そこで、番組スタッフが、「前」を使った、日本語を教えてあげると…。
「前向き、覚えてる。前向き!大切な言葉 」
新しい日本語を覚えて、うれしそうなエレさん。日本での生活に長い間、憧れを持っていたといいます。
「私の将来の夢は、日本に住みたい。日本はめっちゃ大好き。私の心はいつもうれしい。日本の場所を見て、日本人と話して日本語で、心がうれしいになります」
富士山きっかけ 日本のおもてなしに感動
日本に憧れたきっかけは、1枚の写真です。
「16歳の時、パソコンで写真を見て、日本の写真を見て、めっちゃきれいと思った。行きたいと言っていました。私はだから、めちゃめちゃ頑張りました」
当時16歳だったエレさんが感動したのが、山梨県の河口湖の近くから撮影した、富士山の写真でした。「この景色を直接見たい」と思い、日本に行くことを決めたといいます。
「1年間、イタリアのホテルで働きました。節約しました。日本に戻ってきました。たくさんのお金をためました」
イタリアの四ツ星ホテルで働き、来日するための資金360万円を貯金。念願かなっての来日ですが、すべてが順風満帆というわけではありません。
「私が学生のビザだから、今1年3カ月くらい日本で住むことができます。今勉強しながらバイトもしてます」
学生ビザの期限は、来年6月。本格的に移住したいと考えていますが、日本語の能力や職歴などの条件を満たさなければ、就労ビザを取得することができません。
「例えば、ビザ変更して、日本語の試験は大事なこと。必要です。あとはいろいろな経験。例えば4年間5年間働きました。イタリアで。これはめっちゃ大切です」
エレさんは現在、バイト先の会社を通じて申請していて、結果を待っている段階だといいます。
現在、バイト先のホテルで、フロント業務を担当しているエレさん。アルバイトから正社員への昇格を目指しています。
「最後にここに来てくれれば、タクシーを手配しますよ」
ホテルの客層は、7割以上が外国人。5カ国語を話せるエレさんは、即戦力として活躍しています。
ホテルグラフィー渋谷 島田敬大さん
「彼女自身が英語、イタリア語を話せるというのもあるので、ゲストに合わせたコミュニケーションが取れるのが彼女の強み」
イタリア時代にホテルで働いた経験が生き、日本での業務はすぐに覚えられましたが、母国との違いに驚いたことも多かったといいます。
「ヘアゴムとか、イタリアのホテルにはありません。あと、ボディータオル。ヘアブラシも、イタリアにはない。あとパジャマあります。めっちゃビックリしました」
「(Q.パジャマ置いてあるところは世界にない?)世界にないです。だから、私はこの日本の文化が大好きです」
日本のおもてなし文化が、大好きだと話すエレさん。自らも実践すべく、取材を受けていても困っている客を見つけたら、すぐさま駆け寄ります。
「皆、知らない人にも親切だし、ホテルの中でも外でも、日本のおもてなしは世界一」
自炊、手作り弁当持参
そんなエレさんの日本での暮らしは、どのようなものなのでしょうか?
限られた収入の中、節約を意識したマイルールがあるといいます。
「これはきょうの材料、これは私のレシピからこれを買います」
その日の献立に必要な材料だけをメモ。それ以外のものは、買わないようにしています。
「今はタマネギを買いました。次はカボチャ買います。探します」
この日の献立は、カボチャのリゾットでしたが、100グラム74円と96円の値段の違うかぼちゃを前に、悩むエレさん。選んだのは?
「これを買う。節約のために安い方を買います」
これで、必要な材料はそろったかと思いきや。
「他の材料は…えっと、これはどうしよう。これちょっと難しい。スープだけど野菜スープ?」
エレさんが求めていたのは、リゾットに使う野菜スープの素。店内を歩き回って探しますが、途中にはたくさんの誘惑が。
「お酒だめ!だめ!だめ!お菓子ダメ!お菓子ダメ!」
「(Q.お菓子好きなの?)好き、めっちゃ好き、でもお菓子だめ」
少しでも節約するために、大好きなお酒やお菓子は我慢します。
「これは…味の素。あ!そうです、これです。よかった、ありがとうございます」
「(Q.買うの初めて?)初めてです、日本で初めてです。いつも私スープを作って、自分で作ります。でも、めっちゃ便利だと思います。これ」
必要な材料がすべて手に入り、一安心のエレさん。レジに行く前にほっと一息つける場所があると、案内してくれました。
「いつもこのスーパー行ったら、この場所を見ます。いつも見てうれしいになります。全部買いたい。パスタ買いたいね」
イタリアのパスタが陳列されているコーナーを見て、母国を思い出し、笑顔に。うれしい気持ちのまま、自宅へ帰ります。
仲間と一緒に、ソーシャルアパートメントで暮らしているエレさん。
「きょう新しいことばを勉強しました。味の素、初めてこれ、えっとね、スープを作る、野菜スープを作る。めっちゃ簡単でしょ?今、大事なこと」
「私の趣味は料理を作ることです。だからこれ、私のプレゼント買いました。たくさんおいしい食べ物を作りたいから」
日本語学校には手作りの弁当を持参。家でも、仲間たちに料理をふるまっていて、今回は、その腕前を披露してくれました。
「オリーブオイル、これは入れたらめっちゃおいしいになります。あとはちょっとだけ塩」
「これはイタリアの形、いつもコメを入れて山みたいにつくって」
「(Q.なぜ山作る?)この形はコメがクリーミーになります」
先ほど買った調味料も、さっそく活用します。きれいにかきまぜれば、エレさん特製のかぼちゃリゾットの完成です。
「こんな感じ、いっぱい食べます」
何も言わず、番組スタッフの分まで用意してくれたエレさん。イタリアでは、まずお客さんに食べてもらい、感想を聞いてから自分も食べるというおもてなしの文化があります。そこで、ディレクターからいただきます。
「どうぞ。イタリアの文化は私が作った。だから、お客さん、友達、先に食べて。私、ちょっと見て、おいしかったら、わたし食べます」
「どうですか?」
スタッフ
「おいしい」
エレさん
「よかった~」
番組スタッフへの手紙も…
エレさんの部屋で大事に飾られているのは、原点である富士山の掛け軸。
「私の将来の夢は、自分の会社を作りたい。私のホテル、日本で作りたい」
日本で泊まった人が「家みたい」と感じられるような、温かみのあるホテルをつくりたいというエレさん。
「皆はめっちゃ楽しいの時間になって、あとは一緒にイタリアの文化と日本の文化をミックスしたら、めっちゃいい感じと思う」
イタリアにいる家族も応援してくれています。
「お母さんは『エレはめっちゃ強いから自分の夢つくってください』と言っていました。私の夢、最初の夢は、私の家族に私のホテルで泊まることができます」
「16歳の時、めっちゃ頑張った。ちょっともし良くなかったら泣いちゃうけど。やめない、絶対やめない、帰らない」
16歳の時の決意を忘れず、母国から遠く離れた日本で、夢に向かって挑戦し続けていますが…。
「めっちゃストレスあって。だから私の家族会いたい、ぎゅーしたいとか。頑張ってと」
いつもポジティブなエレさんですが、家族への思いが募り、気分が落ち込む日も。そんな時は、家族にメールを送ったり、アルバムの写真を見返したりして、前を向くようにしています。
「いつも前向きみて、めっちゃポジティブの考えあって、やめない。いつも前を見て絶対やめない。自分のホテルつくりたい。気持ちはいつもやめないだから、いろいろな新しいこと勉強したい」
番組スタッフが教えた「前向き」という言葉を、すでに自分の言葉にしていたエレさん。
「(Q.これからも不安なことに負けずに頑張っていきますか?)はい、もちろんです。不安はちょっとね、あります。ここに肩に。でも大丈夫と思う。頑張ります。ファイティン、ファイティン」
別れ際に、取材した番組スタッフに手紙を書いてくれました。
「アヤノさん、ありがとうございました!きょうは楽しかったでした。いろいろなことを話しました、うれしいになりました!今から私のゆめをがんばります!アドバイスありがとうございます。こんどもあいたい。友だちになりたい」
(「グッド!モーニング」2025年12月30日放送分より)
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