■半年間寝付けない苦しみ 不安を消し去るための「準備」

 こうした「したたかさ」を持つウルフ氏だが、東京五輪本番までの道のりは平坦ではなかった。自国開催のプレッシャーは凄まじく、「半年ぐらい、もう夜寝付けなくて。ずっと考えて意識していた」と精神的に追い詰められていたことを明かしている。

 しかし、その不安こそが練習に駆り立てた。「自信があったから練習を頑張ったのではなくて、不安の方が強い」と語るウルフ氏にとって、練習は不安を消し去るための作業だった。

 「道のりを明確にして、この練習だったらこの技術身につくとか、この相手だったらこういう試合をすれば勝てるとか、全部組み立てて不安を消した状態で試合に行った」と徹底的に準備した。

 「こうやれば勝てたのに、やらなかった自分に気づいた時の方が、心がねじ曲がる」。その言葉通り、あらゆる手段と情報を使い切り、ほんの少しの後悔もない準備を整えること。それこそが、ウルフ氏が金メダルを手にするために辿り着いた勝者のメンタリティだった。
(『ABEMA Prime』より)
 

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