日本人の名字のヒミツ大解剖 天皇家に名字がない理由&佐藤・鈴木がツートップになった理由は?
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 日本人なら誰もが持つ「名字」。その読み方や数、そして意外な由来まで…知れば知るほど奥深い“名字の世界”をたどります。

【画像】「八月一日」の名字は何と読む?

難読名字クイズ!「陽」で〇〇?

名字研究家 森岡浩さん
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 今回は、古代から続く名字の歴史を深掘り。名字研究家の森岡浩さんに解説してもらいます。

 その前に、まずはクイズです。

森岡さん
「名字たくさんあるんですけれども、中には読み方が難しい名字もあります。クイズにしてあります!」

 ということで、難読名字クイズです。「陽」の名字は何と読むか分かりますか?

森岡さん
「ヒントを言いますと、方角が関係します。太陽が当たっていいなっていう…」

佐藤ちひろアナウンサー
「ひがしさん?」

森岡さん
「残念」

佐藤アナ
「にしさん」

森岡さん
「みなみさんと言います」
「南はやっぱり日当たり良くていいじゃないですか」
「家でも南向きがいいですよね。なので、太陽の陽って書いてみなみさんっていいます」

「みなみ」と読む
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 農業を営む人が多かった時代、日当たりの良さにあやかって付けられたとされます。他にも「よう」や「ひなた」などの読み方もあります。

佐藤アナ、難読名字は「漫画で…」

 続いて第2問、問題は「八月一日」です。

佐藤アナ
「8月じゃなかったかも知れないんですけど。ワタヌキさん?」

森岡さん
「それ四月一日ですね。旧暦です。今だと9月の上旬くらい」

佐藤アナ
「刈る…?」

森岡さん
「そのあたりです」

佐藤アナ
「かりさん?」

「八月一日」は「ほずみ」
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森岡さん
「ほずみさんになります」
「9月上旬と言うと稲の穂が出てきます。台風シーズンですよね。穂を刈って神様にお供えして、台風で稲がやられてしまわないようにお祈りします。そういう神事につながる。穂を摘むのでほずみと読みます」

 ちなみに佐藤アナが答えたワタヌキさんは「四月一日」と書きます。

佐藤アナ
「漫画の方で…」

 難読名字第3問、問題は「小鳥遊」です。

佐藤アナ
「あっ!分かります!」

森岡さん
「ひょっとして漫画ですか?」

佐藤アナ
「はい!たかなしさん!」

森岡さん
「そうです!素晴らしい!由来分かります?」

佐藤アナ
「分からないです…」

「小鳥遊」は「たかなし」
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森岡さん
「小鳥が遊ぶって書きますけれども。小鳥は弱い鳥なので大きな鷹(たか)に襲われるかもしれない。で、鷹がいないと小鳥が遊べるのでタカナシさんです」

 このようにいろんな由来を持つ名字ですが、そこから歴史をたどると、天皇家にも話がつながっていきます。

「姓」と「名字」はどう違う?天皇家だけが名字を持たないワケ

森岡さん
「名字を持ってない方もいるんですね。それは実は天皇家なんです」

佐藤アナ
「それはどうしてなんですか?」

天皇家だけが名字を持たないワケ
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森岡さん
「名字・姓というのは、天皇が与えたものなので、天皇は与える側なので名字はないんです」

佐藤アナ
「姓と名字って何が違うんですか?」

森岡さん
「大昔に天皇からもらったのが姓ですね。名字は平安時代以降に自分たちで付けたのが名字です」

藤原を由来とした名字がどんどん広がった
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 天皇が与えた姓でよく知られているのが、天智天皇が中臣鎌足に与えた「藤原」です。この藤原を由来とした名字がどんどん広がったことは、前回紹介しました。

佐藤アナ
「その名字はどんな歴史があるんですか?」

森岡さん
「日本史の教科書で1番最初に出てきた人名って何でした?」

佐藤アナ
「卑弥呼」

森岡さん
「ですよね。卑弥呼ってひとかたまりじゃないですか。姓名が分かれてないですよね。その時代は姓名は分かれてないんです。でも同じ時代、ちょうど中国だと、三国志の時代。例えば劉備って劉が姓で備が名前です。当時の中国はもう姓名は分かれているんです。中国と交流することによって、名前は姓名分かれているという文化を取り入れるんです。なので、卑弥呼の次に出てくる名前っていうと、物部守屋とか蘇我蝦夷とかってちゃんと分かれているじゃないですか。この時代になると、中国にならって姓名と分かれるようになります」
「その時にどうやって蘇我とか物部を名乗ったかというと、当時、大王家だった天皇家の先祖が一族に対して与えたものが姓。その時代は、豪族はみんな姓を名乗っていて、大王家は姓を持っていない。天皇家はその大王家の子孫なので、いまだに(姓を)持っていないんです」

 現在では、姓と名字は区別せず同じ意味で使われるのが一般的です。

佐藤アナ
「名字っていうのは誰が一番最初に名乗り始めたんですか?」

武蔵七党
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森岡さん
「実はこの人が最初と分からないんです。でも多分この辺じゃないかなって分かっていて、それが武蔵七党。平安時代の終わりに関東地方西部に同族の武士団が何個かあった。この一族がみんなどんどん分家して広がる時に、それぞれ住んだ場所の地名を名乗っています。これが多分名字の最初じゃないか…」
「横山党という一族があります。これ元々は小野氏。小野妹子とか小野道風が有名です。この小野氏の一族が関東にやってきて、八王子の横山という所に住んだので、横山党という武士団になり、どんどん分家していきます。分家した先の地名を名乗るので、神奈川県に海老名がありますが、海老名に住んだ人は海老名さんになります。こうやってみんながそこの地名を名乗っていくので、多分、最初の方の人だと思っています」

 平安時代の後期から広がっていったと考えられる名字は、鎌倉時代に入るとさらに変化します。

鎌倉時代から続く名家 武田家
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森岡さん
「鎌倉時代、有力な武士はどんどん分家していきます。代表的で分かりやすいのが武田家。武田信玄で言えば、武田家。武田信玄は戦国時代ですけど、これ鎌倉時代からずっと続く名家です。なので、鎌倉時代に山梨県のところに住んで武田を名乗るんですけど、そこからずっと本家だけが武田を継ぎます。次男以下は周りに分家していきます。すると、地名を名乗ります」

佐藤アナ
「こんなに分かれていくんですね」

森岡さん
「これが日本に名字が多い一つの理由ですね」

 武家などを中心にどんどん増えていった名字は、室町時代には庶民の間にも広がっていきました。

明治の戸籍で全国民が名字持ちに

佐藤アナ
「戦国時代はどうだったんですか?」

森岡さん
「成り上がってくる人もいるわけですね。そういう人だと名字を自分で付けたりもしています。例えば来年の大河ドラマ、豊臣秀吉。最初は木下って名乗っていました。この木下がどこからきたかは諸説あるんです。自分で付けたという説もありますし、元が木下だったという説もあります。これが途中から羽柴に変わります。この羽柴は、自分よりも上の人達だった丹羽長秀の羽と柴田勝家の柴と、自分の上司の名前から2つを取ってきて羽柴にしたと言われています。こうやって自分で作ることもできたんです」

 ちなみに豊臣は天皇が与えた姓で、名字は羽柴のままでした。

姓と名字、両方を持つ
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森岡さん
「昔の人は姓と名字両方を持っているのは普通なんです」
「武田信玄は武田が名字で姓は源です。上杉謙信は上杉が名字で、姓は藤原ですから、偉い人はこれが普通なんです」

 そして江戸時代になると、武士の特権などのルールにより、庶民は公での名字の使用が制限されていました。

佐藤アナ
「いつ頃から名乗れるようになっていくんですか?」

森岡さん
「これは明治になって戸籍を作る時に、戸籍には必ず名字を登録しないといけない。ここでみんな名字を持つようになります。江戸時代に名字を持っていたと言っても100%持っていたわけじゃないんです。江戸時代に名字を持っていない人もいて、その代表が実はお坊さんなんです」

佐藤アナ
「お坊さんは持ってなかったんですか?」

森岡さん
「お坊さんは公式に名字を持たない人です。(名字を付けるのを)抵抗した人もいたそうなんですけど、だめだと。お坊さんは無理矢理でも名字を付けろと言われるので、結構、仏教の経典とか仏教用語から名字を付けるので、漢字が難しいとか読みが難しいというお坊さんが結構いますね」

 そんな仏教用語にちなんだ名字に、「梵」と書いてソヨギと読む元プロ野球選手もいます。

元プロ野球選手 梵英心氏
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森岡さん
「梵(ぼん)というのは仏教用語で、宇宙の真理みたいな言葉ですね。ニルヴァーナって言葉なんですけど、宇宙の真理みたいな言葉を名字に付けます。これをなぜソヨギって読むかってことなんですけども、この漢字自体、元々の意味が、木の上を風がそよぐということを漢字にした」

佐藤アナ
「オシャレ!」

森岡さん
「そういうことを知っているんですね、お坊さんは」

それでも佐藤・鈴木がツートップになった理由は?

佐藤アナ
「成り立ちまで教えてもらえると分かりやすいです。この梵さんのような珍しい名字がある中で、佐藤は広がっていったわけじゃないですか、1位になるぐらい。どうしてこんなに広がったんですか?」

大名にほぼいなかった
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森岡さん
「これは、ちゃんと理由があって。佐藤と鈴木は日本の名字ツートップなんですね。両方ともに共通する理由があって、実は戦国大名で佐藤とか鈴木は聞いたことないですよね。江戸時代の大名でも佐藤も鈴木もいないんですよ。実は佐藤は殿様に一人もいなかったからですね」

佐藤アナ
「そういうことなんですか。悲しいようなうれしいような。複雑ですね」

(「グッド!モーニング」2025年12月19日放送分より)

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