そんな働き者の男性を支え続けてきたのが妻だ。男性とはお見合いで出会ったが、当初は結婚する気がなかったという。「『私は農家に行きません』って断ってきたんですよ(笑)」と男性が笑うとおり、早くに父を亡くして農家で苦労する母を見てきた妻は、同じ農家への嫁入りを拒否していた。しかし、母親が男性の誠実な人柄を見込み、「しっかりした人だから」と背中を押したことで結婚を決意。
お見合いの半年後に結婚すると、女の子2人と男の子1人の3人の子宝に恵まれた。男性の高校卒業時に4頭だった乳牛は、結婚する時には12頭に。以来50年、酪農の道を歩んできた。
男性は新しいことにも挑戦してきた。母校の農業科が存続の危機に瀕した際は、当時まだ珍しかった「牛の受精卵移植」の研究に協力。ホルスタインに黒毛和牛の受精卵を移植して出産させるという技術を成功させ、母校の存続に貢献するとともに、一家の経営も安定させた。そして男性も17年前、経営権を長男に譲っている。
この50年という時間はどういうものだったのか。捜索隊が尋ねると、男性は「(妻は)よくついてきてくれたと思います。自分で向いた方に突っ走るけど、後ろを向くと必ずついてきてくれる。それだけで安心しました」と感謝を口にする。それを受けて妻も、「正解だったんじゃないですか」と笑顔を見せた。
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