■1万3000円の値上げが撤回できた事例も

Aさん40代(都内)に届いた値上げ通知
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 実際に家賃の値上げ通知書が届いたというAさん。通知書には「公共料金をはじめとする諸物価や人件費の上昇による建物維持・改修にかかる費用の上昇」「諸税のアップ」「周辺建物賃料の上昇」などが理由として記され、文末には「やむなく賃料等の改定をお願いするものでございます」と書かれていた。値上げ額は3000円だが、2年間だと7万2000円になってしまう。

 これに対し三輪氏は「いろいろ書いてあって、確かにそれはそうなのだが、基本的に“お願い”って書いてある。だから、お願いはするのは自由だけど、それを受け入れるかどうかもこっちの考え次第だよねっていう風に捉えるべきかなと思う」と指摘した。

 Aさんは、12月半ばに値上げ通知を受け取った後、1月初旬に「誠に恐縮ですが、了承致しかねますので」と返信したそうだ。10年以上前から長く入居していることによる、建物全体や設備等の経年劣化などを理由として記し、合意書には署名捺印をせずに送付したという。その結果、1月19日頃には管理会社から値上げ撤回の連絡があり、家賃は据え置きになったという。

 この対応に三輪氏は「本当に模範的というかきちんとした対応。やっぱり、値上げはやめますということで、従来賃料のままになったわけですよね。だから、そのひと手間で、全然効果が違うわけだから、そのひと手間を惜しんじゃいけないなと、この話を聞いても思う」と称賛した。

 Bさんのケースでは、1万3000円という大幅な値上げ通知が届いた。Bさんは「敵意と受け取られないような文章」を心がけ、貸主のマンションの修繕への感謝と家賃の値上げには一定の理解を示しつつも、1万3000円の値上げ幅が少しでも下がればと落としどころを探るつもりで交渉に臨んだ結果、今まで通りの家賃で合意に至ったという。

 この対応の良かったポイントとして、三輪氏は「やっぱり丁寧なお返しというところが良かったんだと思う。結局、交渉も人対人の問題だから、感情的な反発を向けられると、『いや、こっちも』となったりする。そうでなく、冷静にお互いに立場が違うだけだから、感情的な対立じゃなく、話し合っていきましょうという姿勢を見せるのは、いい決着にするためのいい条件かなと思う」と分析した。

交渉のポイントは「書面」と「冷静さ」
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