■世界で唯一、リスカ跡を消す形成外科とは

村松英之院長
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 リストカットの傷跡に特化した外来を持つ形成外科「きずときずあとのクリニック豊洲院」村松英之院長は、リストカットについて「ストレスを和らげる行為の1つで、死にたいくらいつらい感情や怒り、悲しみ、絶望などが頭の中をめぐった時に切ると、すっと楽になるという理由が一番よく言われる」と解説する。

 自傷行為は「痛みにより、脳内麻薬が出る。最初は“爪をかむ”でも大丈夫かもしれないが、思春期などで家庭や学校のストレスが積み重なると、それだけでは和らげられなくなり、リストカットに行く。1人で隠れて行えて、誰にも迷惑をかけないことが、増えている要因なのでは」と推測する。

 開院した経緯を「形成外科医として20年以上診療してきた中で、傷跡で悩む人が多かった。『何科にかかればいいかわからない』という声も多く、形成外科がマイナーだと気付いた。日本では“形成外科”と“整形外科”の名前が似ているため、形成外科医の自分に『腰が痛い』と言ってくるが、海外では傷跡治療の認識がある。傷跡に悩む人を助けたいと思い、『きずときずあとのクリニック』を開業した」と説明する。

 治療については、「リストカット患者の治療は、あまり経験がなかったが、模索する中で“戻し植皮”を知った。患者に協力してもらいながら施術すると、『人生が変わりました』と言われた。『腕を常に隠して生きてきたが、隠さなくても良くなり、気持ちも楽になった』と言われ、どんどん“戻し植皮”に力を入れるようになった」と振り返った。

 戻し植皮では「ただ縦の傷にするだけでなく、やけどの傷跡に見せる」のだそうだ。「『横の傷はリストカット』という認識があり、目にとまる。ただ、やけどの跡は記憶に残らない。『他人の目をひかない傷跡』となれば、腕を出すようになり、人間関係も良くなる」。

 自身にもリストカットへの偏見があったというが、「今では背景もできるだけ理解するようにしている」という。「精神科医の論文に、自傷行為はストレスを和らげる行為のため、やめてから2年間はたたないといけないと書かれていた」ことから、“2年以上”を手術の条件にしている。

 再発予防については「『将来何になりたい』や『どうして自傷したのか』を自分で理解する必要がある。精神科的な治療がほとんど終わり、傷跡をどうにかしたいと思う人が来るため、精神科との関わりはそこまで強くない」と話す。

 患者の思いは人それぞれで、「自分にとって大事な傷跡の人もいるが、偏見と傷跡のてんびんが崩れ、偏見で社会生活が苦しくなると、傷跡をどうにかしたくなる。ただ残念ながら、当院で手術しても1割程度は『腕が出せない』という人もいる」のだそうだ。

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