■エプスタイン文書に富裕層の名前がずらり

エプスタイン文書とトランプ氏
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 エプスタイン氏については2005年、14歳少女が被害届を出し、捜査が始まった。その後の2019年に性的人身取引の疑いで逮捕・起訴され、拘置所で死亡。自殺とされる。そして2025年11月にトランプ氏が資料公開の法案に署名し、12月に一部が公開された。

 エプスタイン氏と関係があるとされる著名人としては、トランプ氏やクリントン元大統領、マスク氏、英マンデルソン前駐米大使、サマーズ元財務長官、英アンドリュー元王子らの名前が挙がっている。

 アメリカ在住の作家でジャーナリストの冷泉彰彦氏によると、「『全部を公開する』といい、法律も作ったが、小出しにしか出てこず、出しても黒塗り部分がある。トランプ氏が怖がっているような様子が伝わり、国民は疑心暗鬼になりつつある」という。

 両者の関係性については、「トランプ氏のフロリダの豪邸が、エプスタイン氏が活躍していたパーティーの会場だったが、悪事が発覚した際にトランプ氏は『絶交している』と言っていた。その後、エプスタイン氏は、私有の“エプスタイン島”で悪いパーティーをやっていたとされる」と説明する。

 こうした背景から、「トランプ氏は島に行っていないとされるが、もし行っていれば大変なことになる。フロリダでパーティーをしていた当時に、トランプ氏が犯罪行為を見て見ぬふりしたり、ほう助したりしていたら…といった疑心暗鬼が国民に出てきている」という。

 トランプ氏の姿勢は「物事をわかりやすくするのが大好きなため、今は『関係ない』と言っている。実際は親友だったが、ある時期にエプスタイン氏の行為が悪質だと絶交した」といったもの。「国民は『現在は関係ないとしても、友人だった時期に悪事を本当に知らなかったのか』という点に関心を持っている」。

 文書の公開で、そうした疑惑の決着が期待されたが、「議員だけ集め、秘書が同席してはいけない。メモは取っていいが、写真は撮ってはいけない…といった条件下で公開された。議員も『あまり漏らしてはいけない』と言われている。そのため、余計に世論は『どうなってるの』『これで幕引きなの?』と感じている」と語る。

 文筆家で情報キュレーターの佐々木俊尚氏は、「アメリカの社会構造が如実に表れている。トランプ氏は選挙で『貧困白人労働者層を救う』と言っていたが、就任式ではマーク・ザッカーバーグ氏やジェフ・ベゾス氏といったテック界の大物を従え、マスク氏とも仲良くするなど、『結局、エスタブリッシュメント(支配層)側ではないか』との声もあり、二重構造が存在する」と指摘する。

 その上で、「アメリカには厳然たる階級があり、金持ちのネットワークに政財界が飲み込まれている。となると、そのネットワーク内にいるトランプ氏らが絡んでいるのは当然だとなる。これまでトランプ氏は『金持ちネットワークの人間だが、白人労働者の味方だ』と言っていたが、化けの皮が剥がれてきたのでは」と分析した。

 中間選挙はどうなるか。冷泉氏は「このままなら、多少の影響はある」としつつ、「トランプ氏を2期目に押し上げたのは、若者を中心とした“現状への不満”と“将来への不安”だった。就職難やAIが仕事を奪う中で、不安が渦巻いているが、『テック企業やグローバリズムと友達の民主党は、この不安に答えてくれない』といった感情もある」と解説する。

 そのため、「関税で貿易を変え、アメリカに雇用をもたらすトランプ氏にかけてみようと、みんな投票した」と振り返る。「しかし、うまく行っておらず、『トランプ氏も結局大きな力に流されている』となっている。表面的にはエプスタイン文書が不信感に火を付けたように見えるが、本筋には『アメリカの社会・経済をどうするのか』があり、そこが争点になる」。

■若者の不満は左右、さらに上下へ
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