被告の法廷での様子は?
━━危険運転致死傷罪と過失運転致死傷罪はそれぞれどのような罪で、刑罰の重さにどれほどの“差”があるのか?
「危険運転致死傷罪は、例えば飲酒運転やあおり運転など、悪質な行為がある場合に成立する可能性があるものだ。人を死亡させた場合は1年以上の有期懲役で、最大で懲役20年になる可能性もある。一方、過失運転致死傷罪は7年以下の拘禁刑、場合によっては罰金になることもある」
━━弁護側は、鈴木被告の血液からアルコールが検出されたにもかかわらず「飲んだ事実はない」として過失運転致死傷罪を主張したのか?
「その通りだ。初公判で鈴木被告は『飲んでいない』と証言。その後の被告人質問では『記憶がない』などと供述していた。だが今回の裁判は9日間という非常に長い期間にわたって行われ、検察側は飲酒運転を立証するために大半を費やした。例えば鈴木被告の採血の状況を立証したのだが、事故後3回にわたって採血が行われており、いずれもアルコールが検出されている。その結果を受けてアルコール量から逆算すると事故を起こした時の鈴木被告のアルコール量が人によっては言語障害や距離感が麻痺するという酩酊期にあった可能性があると指摘している」
━━血中アルコール濃度だけでは証拠にならないのか?
「今の法律では事故後のアルコール濃度だけで判断することができない。しっかりと確実に、例えば酒を飲んでいる瞬間を見るなどが立証できないと…という考え方だ」
━━鈴木被告の事故当日の運転の様子は?
「法廷のスクリーンに当日の運転の様子が映し出された。そこには正常な運転ができているように見える箇所もあった。これは鈴木被告がトラック運転手であり、ルーティーンで行った行動に対して飲酒の影響が出にくい場合があるからだろう。とはいえ実際に今回の事故の際には異常な運転をしている。検察側の指摘としては、事故の数十分前に割り込み運転があった時に鈴木被告が急ブレーキを踏んだり、時速90キロという法定速度を30キロもオーバーするような運転をするなど、随所で飲酒の影響が確認できると指摘した」
━━検察側はこの状況からどのように飲酒運転の裏付けたのか?
「例えば予備的な証拠として、これまで事故を起こす前にも飲酒運転をしていたことを挙げた。事故を起こすまでの2週間で5回飲酒運転しているという事実。これは、鈴木被告のトラックの社内を映したドライブレコーダーにコンビニに立ち寄った際に容器を開けて一気飲みするようなシーンが残されていた。こういったものから、鈴木被告は常習的に飲酒運転をしていたと指摘した。とはいえ決定打がなかったため検察は脇から固めざるを得なくなり、これだけ長い裁判になった」
━━被告の法廷での様子は?
「事故の遺族は『まるで他人事に見える』と話していた。実際に鈴木被告は下を向いて、法廷内のスクリーンにもほとんど目を向けなかった。飲酒については『覚えていない』という供述を繰り返していたが先述の割り込み運転などについては事細かに話した。遺族としても『本当に飲酒についてだけ記憶がない』という形が悔しいという。そもそも鈴木被告は過失運転致死傷罪については争っていない。つまり、3人を死亡させたことは認めていて、無罪を主張しているわけではない。にもかかわらず真摯な態度がない。私が今回の裁判で一番印象に残ったのは、検察官が『アルコールの影響はあったんですか? 否定できないんですか?』と問い詰めた場面だ。鈴木被告はしばらく答えられずに数十秒、数分経った後に『じゃあ否定しますか』と言い、まるで自分のこととして向き合えていない印象を受けた」
━━被告の態度に遺族も憤りを覚えたのではないか?
「裁判が始まる前に遺族に取材をする機会があった。その際、『しっかりと鈴木被告の目をまっすぐ見て裁判に臨みたい』と話していた。ただ、いざ裁判が始まると、鈴木被告はずっと下を向いていて、遺族に謝罪することはおろか一礼することもなく、目を合わせることもない。遺族としては非常に憤りを感じたという」
━━決定的な証拠が揃ってない中、危険運転致死傷罪として最長の懲役20年の判決が言い渡された。裁判長は判決についてどのような説明をしたのか?
「検察が立証してきたことを裁判長としても繰り返した形だ。採血でアルコールが検出されたこと。運転席から見つかった焼酎の空き容器と採血から鈴木被告が飲んだと推定されるアルコールの量に矛盾がないことから『飲酒運転があったと認められる』と説明した。過去に飲酒運転をしていた映像も残っており、これだけ繰り返しているのは悪質極まりなく、被害者を巻き添えにして起こした事故であるにもかかわらず虚偽の供述をした。そういったその反省が見えないところを厳しく追及した。また、鈴木被告は運転手という職業であり、安全運転に気をつけることが本来の姿であるはずなのに、そういったものを度外視して身勝手な理由で飲酒運転をして事故を起こしたことも判決を決める上でも重要視された印象を受けた」
━━判決に対する遺族の受け止めは?
「20年という“上限”までいった点については『まずほっとしている』と話していた。だが遺族としては『酒を飲んで運転して死亡事故を起こすということは無差別殺人と同じこと』だと。だから20年という上限があることがやるせないと話している」
━━被告側・弁護側による控訴の可能性はあるのか?
「被告側の過失運転致死傷という主張が根本から覆されているため、当然控訴の可能性もある。その場合、遺族としては戦いが続いてしまうわけだが、遺族は『3人のためならどこまででも頑張れる』と話している」
━━危険運転については厳しく取り締まっていく方向なのか?
「伊勢崎の事故も含めて被害者の呼びかけが世論を大きく動かしているという印象がある。被害者にとっては、危険運転致死傷罪なのか過失運転致死傷罪なのか、“差”がある。呼気0.5ミリグラムのアルコールが検出されれば、その時点で危険運転致死傷罪が成立するという見直し案もあり、厳罰化につながる方向に進んでいる印象を受けている」
(ABEMA/ニュース企画)
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