東日本大震災から15年を迎え、災害時のリスクを肌で感じる「体験型」の避難訓練が注目を集めている。従来のシナリオ通りに進める訓練とは一線を画す、その実践的な取り組みの意義について、テレビ朝日社会部の山内陽平記者が解説した。
NPO法人「減災教育普及協会」が実施する訓練の最大の特徴は、地震の揺れやそれに伴うリスクをリアルに再現している点にある。例えば、震度6弱の激しい揺れを再現するマットを用いた体験では、子どもたちが「これほど強い揺れがあるとは知らなかった」と驚きを口にする。また、訓練では単に「頭を守れ」と指示するだけでなく、その姿勢の有効性を問い直す。地震で天井が落下した場合に天井パネルの一部がどれくらいの重さになるのかを体験できるようおよそ20キロの板を子どもたちに見せ、「もしこれが落ちてきたら、今の姿勢で耐えられるか」と問いかけることで、子どもたちは「絶対に耐えられない」「柱のある場所に逃げなければならない」と、直感的に身を守る術を学び取っていく。
山内記者は、従来の訓練が抱える課題として、特定の行動を繰り返すことによる「思考停止」を挙げた。山梨県の小学校で行われた緊急地震速報の抜き打ち訓練の映像では、グラウンドにいた9割ほどの生徒たちがサイレンの音を聞いて、一斉に校舎内の教室へ走り出すという衝撃的な光景が映し出された。これは「地震の時は机の下に潜る」という指導を忠実に守ろうとした結果だが、落下の危険が少ないグラウンドから、あえて窓ガラスや天井が落ちてくる可能性のある屋内へ戻るという、本来の目的とは逆の行動をとってしまった例である。山内記者は、「どこにいたとしても、そこでどんな危険が起こり得るかを予測し、回避することが重要だ」と、日本大学の秦康範教授の言葉を引用して強調した。
日本には震災で亡くなった方々の数だけ、命を落としたシチュエーションが存在するが、それらを検証して訓練の基準に反映させる動きはまだ十分ではない。現在、前述のNPO法人は日本大学と協定を結び、過去の災害から学んだ実例に基づく避難訓練の基準作りを進めている。「訓練だから失敗してもいい。失敗してよかったねと言えるのが訓練だ」と山内記者は語り、大人と子どもが協力して、自分たちがいる場所のリスクを理解することの重要性を説いた。
さらに、日頃の備えとして重要なのは、自治体が発行する「地域防災計画」や被害想定を知ることである。例えば東京都港区の想定では、首都直下地震により区の7割が震度6強に見舞われる。気象庁の震度想定によれば震度6強では固定していない家具のほとんどが移動・転倒する。山内記者は、こうした科学的に検証され想定として発表されているリスクを自分たちの問題として捉え、家具の固定や感震ブレーカーの設置といった具体的な対策を呼びかけた。特に一日のうち長く過ごす寝室での安全スペース確保など、防災を特別なものではなく、日常の一部として溶け込ませていく姿勢が求められている。
(ニュース企画/ABEMA)

