■900万円を騙し取られた30代女性
特殊詐欺の被害額は、去年1年間で過去最悪となった。被害額は1414.2億円で前年から約2倍、認知件数は2万7758件と前年から3割増に。被害額の7割が「ニセ警察詐欺」で、被害額平均は約910万円、被害者層は20代、30代が最多だった(警察庁「令和7年における特殊詐欺及びSNS型投資・ロマンス詐欺の認知・検挙状況等について(暫定値)」をもとに作成)
東京都内在住のまみぃさん(30代)は、「あなたがマネーロンダリングに関わった容疑をかけられている。富山県警に来てくれ。20〜21日間拘留する」という電話を受けた。「『それは無理だ』と言うと、在宅起訴という形で自宅に居てもいいが、その代わりに保釈金を振り込めと言われた」。
すぐさま250万円を払ったが、これで終わりではなかった。「メイン口座にあるお金が、本当に犯罪に使われていないお金か検査にかけると言われ、指定された口座に350万円くらい振り込んだ。身の潔白を証明するため、『全部私が持っている口座を調査して』と急いで振り込んだ」。
さらに1口座50万円の調査費用がかかると言われ、所持する4つの口座も合わせ、総額900万円を振り込んでしまった。すべて払い終わった後、夫に相談し、そこで初めて詐欺だと気付いたという。
この手の詐欺については「前提知識はあった」というが、「ZoomやLINEでやりとりすることはないとわかっていても、疑う前に『怖い』『どうしよう』というスイッチが入り、『払って生活を維持できるならそれで良い』と思った」と話す。
そして“容疑者”であることを理由に、24時間Zoomで監視され、映せない場合はLINEで逐一報告を求められる。19日後に夫に相談、詐欺と発覚して、ようやく監視終了となった。
なぜ電話を信じたのか。「仕事がうまく行かず、心身ともにボロボロで、判断力がなかった。いつもなら取らない電話だが、意識もうろうで取ってしまい、そこからパニックになり信じてしまった。たまたまその1週間前後で、海外からの電話があるかもと会社から言われていた」。
その後については、「『話した家族も調査対象になる』と言われ、孤立状態になった。不安が重なるなかで、『被疑者が近くに住んでいる』などと脅された。盗聴器検査機を買ったら、運が悪いことに、なぜか家電が1つ反応した。恐怖が重なり、『払ってどうにかなるなら抜け出したい』となった」と振り返る。
Zoom監視は「怪しいとは思ったが、最初に『ちゃんと協力すれば解放される』とくぎを刺された。夫に話したのも筆談だった」という。「夫が職場で相談したのだろう。昼ごろに連絡が来て『詐欺にかかっているよ』と言われた。血の気がさっと引いて、われに返った」。
中央大学・文学部心理学専攻の有賀敦紀教授は、「詐欺の事例を知っていると、『自分なら簡単に見破れる』と思ってしまう。まみぃさんの事例も、後から聞くと『有り得ない』と思うが、当の本人は未来を予測できない。いっぱいいっぱいで、言われるがままに動いたのだろう」と分析する。
■心理学専攻の大学生でも騙される“ニセ警察詐欺”
