■「本来業務以外の切り離し」と「外部化」のメリット・デメリット
海外の先生たちと比べて、日本の先生たちはとにかく長時間労働だ。こうした現状について山崎氏はどう見ているのか。
「社会や親側はこれだけのことを先生に求めていて、求めすぎていると思う。まずそこから理解することだと思う。先生方は子どもたちに向き合う時間だけじゃなく、本当にやることが多い。これは海外から見ると『すごいね』って言われる部分だったけれど、だから大変なのだと思う」
妹尾氏に現状を聞いたところ、「長時間・ノンストップ・ワンオペ労働」が定着しており、給食は「指導時間」、休み時間は「見守り」と必要な休憩が取れていない状態だという。こうした現状を踏まえ、中室氏は次のように指摘する。
「この問題は何を改善すべきかをきちんとターゲットすることが必要だと思っている。教員の働き方については、教員勤務実態調査という調査を数年に一回、文科省がやっている。その中で、多くの教員が『教員が本来業務としてやる必要のない仕事は非常に負担が重いと感じる』と言っている。我々も大学で教えているのでよくわかるが、本来業務である教育や研究などの時間が多少伸びたとしても、『負担だな』『しんどいな』『もうやめたいな』と思わないが、関係ない仕事が増えてくると非常に苛立ちが募ってくる」
「例えば、出張申請や入試の業務など、本来の教育や研究と一切関係ない仕事だから、やっぱり学校の先生も同じなのではないかと思う。転校の雑務とか出張申請とか出欠席の記録とか、すごく多い。そういう本来教員がやることではない仕事をちゃんと切り離していくことが重要だと思う」
では、学校改革をどのように進めていけばいいのか。妹尾氏は改善案として「掃除は一部外部化を」「1学年を複数教員でカバーするチーム担任制導入」「休み時間など見守りには支援員の導入・増員」の3つ挙げている。これに対し、山崎氏は次のように述べる。
「3つ目の学校に大人を増やすという、先生じゃなくていいものは別の方がやるのは、それがいいのではないかと思いつつ、どこに配置するか。休み時間は先生と子どもが関わりを持てる時間なので、それよりは理科の実験とか算数とか、そういうところはスペシャライズした人が入るとか。どこに支援員を入れるかは考える必要があると思う」
「掃除も教室を綺麗にするのが目的だったら当然子どもがやらない方がいいと思うけど、そうではないと思う。自分たちのことを自分たちでやる練習を今まで日本社会では子どもの頃からやってきている。だからこそ今の社会があると思う。掃除の目的を考えると、確かに毎日じゃなくてもいいのかもしれないが、掃除がなくなったら相当日本社会は変わると思うので、ここも議論した上で考えなくてはいけない」
妹尾氏の改善案について、中室氏はどう考えるのか。
「非常に合理的だと思う一方で、これは目標が教員の負担を減らすことになっていると思う。でも、教育の目標は子どもたちの成果にあるのだと思うので、掃除を外部化すると先生は助かるかもしれないけれど、子どもの教育効果はどうだろうと考えてしまう。2つ目も同じで、複数教員でカバーすると先生たちの負担は減るかもしれない。でも、ワンストップで全人格的な教育をとやってきた日本の教育の良さは失われないだろうか、子どもたちにとってどうなのだろうかとは思う」
「海外の研究を見ても、いわゆる教科担任制というのを入れると、小学校低学年の子に関しては、先生との愛着関係が薄れることによって成績が下がってしまったことを示す有力な研究もあるので、ここは先生の働き方改革も大事だけれど、子どもの成果がきちんと可視化されて、それがちゃんと最大化されていくことも注意して見なければいけないと思う」
(『わたしとニュース』より)
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