両者は長年女子トップ戦線で交差してきた間柄。イヨはハイフライヤーとしての精度とスピードで王座戦線を駆け上がってきた一方、ベッキーはインディーからNXT、メインロースターへと長年キャリアを積み上げてきた職人。ベビー対ヒールの立場は逆転したものの、今回のシングルもその文脈の延長線上にあり、「攻めの最先端」と「受けの蓄積」が正面からぶつかる構図となっていた。
中盤、イヨがスピードのギアを上げ、一気にスライドして場外へ滑り込む。ロープをくぐりざまにそのまま”サンセット・フリップ・パワーボム”のリフト状態に持ち込むが、角度とタイミングがわずかにズレ、低空で落ちるラインとベッキーの重心が噛み合わない。このまま行けば後頭部や首筋が硬いフロアへ直撃しかねない、高リスクの一瞬が生まれる。
重心が低く流れる中、通常より早いタイミングでベッキーはとっさに顎を引き、衝撃を逃がす角度に頭を傾けながら、片腕を後ろへ回してフロアへ先に着地。”グシャッ”と物騒な音が響く。本来なら後頭部からストンと落ちかねない位置関係だったが、背中から肩、頭へと順番に接地する安全寄りのバンプへと変換。
実況の清野茂樹アナウンサーが「決めた!フロアの上。強烈!」と叫び、解説が「うわっ」と思わず声を漏らした裏で、自分の頭だけは守る冷静な判断があった。このシーンをファンも見逃さず「後頭部カバー」「保護ボム」「よく受けた」と受け身の技術そのものを称えるコメントが並ぶ。考えてからでは間に合わない、身体が覚えている領域の反射に「お互いうまいねー」という声も聞こえる。
難易度の高い危険ワザが多いプロレスの世界だが、攻める側と受ける側がギリギリで互いを信用しているからこそ成立する攻防。試合自体はアスカの介入もありベッキーが勝利を収め、IC王者復帰後を白星スタート。トップ戦線での存在感を改めて示す一夜となった。(ABEMA/WWE『RAW』)
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