
新茶のシーズンが始まりました。海外での需要が高く、茶葉の高値が続く中、有機栽培のお茶を手がけ、17億円を売り上げる若き経営者に密着しました。
借金3億円返済 年商17億円
静岡県藤枝市の山間には、肥沃な土壌と昼と夜の寒暖の差によって香り高い銘茶を生む産地が広がります。
ここで作られているのが、濃い緑色をした深蒸し茶です。
紀真耶アナウンサー
「良い香りです。うま味はしっかり感じるんですけど、渋みだったり苦みはそこまで強くない。まろやか」
軽トラック1台がギリギリ通れる山道。
葉っピイ向島園 向島和詞さん(40)
「(Q.標高が高い所ですね)標高200~250メートルくらい」
イノシシよけの電気柵の中にあるのが有機茶の茶園です。
「ここが一本仕立てという、幹が太くなるように仕立てています」
「一株一株が1メートルずつ離れてますね」
多くの茶葉を収穫するために密集して植えることが多いお茶の木。本来の木として育てると幹が太くなり、虫と病気に強くなるため、おいしいお茶が取れるそうです。
グルメ漫画「美味しんぼ」にも取り上げられたこの取り組み。
向島さんの母 政代さん (美味しんぼ101)
「亡くなった主人は周囲の反対を押し切って、無農薬栽培に変えたんです」
向島さんの父・和光さんは、今から44年前に有機栽培を始めました。独自の手法を確立しましたが向島さんが18歳の時に肝臓がんで急死しました。
向島和詞さん (美味しんぼ101)
「僕が父の跡を継いだのは、お茶を生き物として見るところにひかれたんです」
跡を継いだ時の売り上げは年間1000万円ほど。赤字続きで、ふくらんだ借金3億円も引き継ぎました。
向島さん
「『(祖父が父に)お前がやっていることは試験場がやることだから』って。持続的に(経営を)やっていくには、思いと経済の車輪、バランスよく回さないといけない。経済の方は本当にガン無視でしたね。電気が止まるとかありました、不払いで」
有機栽培を追求した父の思いに加え向島さんが力を入れたのは栽培から販売までの一元管理と直売による自身の値付けです。今では、年間の売り上げは17億円になりました。
有機栽培茶で勝負
4月下旬から始まった新茶の収穫。自社農園に加え、自宅近くの生産者15軒ほどと協力しながら、有機茶の規模を拡大していきました。
収穫された茶葉は、工場に運ばれると、すぐに100℃の高温で蒸されます。およそ6時間かけて水分を抜き、もまれて加工されていきます。
茶葉の状態によって細かな温度と湿度の管理が必要で、向島さんが五感を使って仕上げていきます。その味は。
向島さん
「おいしい。味が非常に濃厚でコクがある感じ」
向島さんが作るお茶は、最も高いもので50グラム3240円。スーパーで売られるお茶と比べると20倍もの高値がつく逸品に仕上がっています。
さらに、抹茶用の茶葉は収穫の20日ほど前に、日光を遮ることで甘みとうまみが凝縮するのです。
この日完成した粉にする前の抹茶を飲んでみます。
「いいです。葉の色の染まり具合とか、香りとか味とか、かぶせ茶特有の甘みがある」
では、これが粉末になると。
紀アナ
「ちょっと苦みを感じるんですけど、後から甘さも出てきますね。口の後に残るのは、抹茶の香りと甘みです。おいしい」
健康志向の高まりから一大ブームになっている抹茶。特に有機栽培の抹茶はアメリカやスウェーデンなど欧米からの需要が高く、通常のものよりも3割近い高値で売れています。
3月には農林水産大臣賞も受賞しました。今後について向島さんはこう話します。
「(有機栽培茶は)思っていた以上の広がり方をしました。人工的に管理すれば(もっと向上できる)いけるかもしれないが、人工管理して栽培することが好きではないので、そうじゃない物の価値、人だからのせられる価値をもっとのせていきたい」
世界的ブームの抹茶ですが、木に黒い幕をかける抹茶栽培は自然本来の育て方に反するとして今シーズン限りで撤退する方針。地域の生産者のために加工だけ行い、向島さんは国内向けの有機茶の栽培に注力します。
(2026年5月15日放送分より)
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