
このコーナーでは、過去5回にわたって日本の名字ランキング30位までの由来や歴史を紹介してきました。
まだまだある身近な名字。今回はランキング31~40位まで、そのルーツを紹介します。
「小川」は日本の原風景
佐藤ちひろアナウンサー
「名字ランキング1位の佐藤ちひろです。よろしくお願いいたします」
森岡浩さん(名字研究家)
「森岡です。よろしくお願いします」
佐藤ちひろアナ
「この30位以降もメジャーの名字ばかりですね」
森岡先生
「30位台といってもやっぱりすごく上位なので、皆さん自分の周りにいるっていう名字っていうのがほとんどだと思います」
佐藤ちひろアナ
「この31位の『小川』さんはどんな由来なのですか?」
森岡先生
「地名もあります、地形もあります。やっぱり小さな川が流れている。日本、川多いですからね。小川が流れている所には、小川って地名になって、そこに住んだ方が名乗ったのが小川さんになります」
「後藤」は備後?肥後?
続いて32位の「後藤」です。こちらの「後藤」のように「藤」と読む名字は、藤原氏ゆかりの名字です。
森岡先生
「じゃあ後藤の“後”は何か、ということなのですけれども、実はこれ職業」
森岡先生
「平安時代の藤原氏の一族が備後守という職業、備後国の国司になりますけど、備後の“後”を取って、藤原の“藤”とつなげて、後藤と名乗ったと言われています。これ実はちょっと一説がありまして、その備後守になった藤原さん、実は肥後守にもなっている」
佐藤ちひろアナ
「両方?」
森岡先生
「なので“後”は肥後の“後”じゃないかって言う人もいます」
「近藤」は近江の藤原氏
もちろん36位「近藤」も、藤原氏が就いた職業にちなんでいます。
森岡先生
「近藤の“近”、近いって言う字ですが、これは滋賀県の昔の国名で近江と言います。この近江の国の近江掾という役職に就いた藤原さんがいて、近江の“近”と藤をとって近藤さんになっています」
「斉藤」伊勢神宮の藤原氏
同じく「藤」のつく38位、この企画では何度も登場した「斉藤」です。
森岡先生
「15位にも斎藤さんがあったんですけど、15位の斎藤は中に“示”が入っている。38位の斉藤さんは“示”がないんですね。これ実はルーツとしては同じなんです」
伊勢神宮の役職「斎宮頭」になった藤原氏が、それぞれの文字を組み合わせて「斎藤」と名付けたのが始まりだと、以前紹介しました。
「さいとう」という漢字にも、昔の人が書きやすいように省略化していく中で、現在のようにたくさんの表記があります。
森岡先生
「実は15位の“示”のある斎藤さんと、38位の“示”のない斉藤さん。地域によって違う。これは、読み方が“さいとう”で漢字が東と西で違うんです」
佐藤ちひろアナ
「確かに東日本には“示”斎藤さんが多くて、西日本だと簡単な方が多いですね」
森岡先生
「面白いのは、ただ西の方の“示”がない地域でも、福井とか石川の辺りだけは“示”のある斎藤さんが多い」
佐藤ちひろアナ
「確かに。なんでここだけ示になっているのですか?」
森岡先生
「実は、斎藤さんが初めて斎藤を名乗った人が福井県出身。伊勢の方に行って斎藤を名乗った後、また今度帰ってきて、隣の石川県の方に広がるんですね。なので福井とか石川、富山、この辺りは本来の意味の“示”がある斎藤さんというのをいまだに伝えているのだと思います」
佐藤ちひろアナ
「もしこれが漢字統一されたら、かなり多いってことですよね」
森岡先生
「そうですね。15位の斎藤と38位の斉藤なので、両方足すと多分ベスト10とかになってくると思いますけれども、佐藤さんの方が圧倒的に多いです」
佐藤ちひろアナ
「本当ですか、良かったセーフですね」
「遠藤」は遠江国の藤原氏
他にも同じく「藤」のつく40位の「遠藤」があります。 遠江国に住んだ藤原氏が、国名と藤原を組み合わせて「遠藤」にしたとされています。
地形や地名が由来の名字も
続いては33位の「岡田」です。
佐藤ちひろアナ
「この岡田も、漢字2種類ありますよね」
森岡先生
「そうですね、簡単な丘もありますけど、今は圧倒的に難しい岡田の方が多いですね。これは時代的に違いがあって、古い時代は簡単な方を書く丘、丘田とか丘本とか全部ひっくるめて多かったようです。時代によってだんだん、今使われている岡の方に変わってきたみたいです」
ただ、画数の多い「岡」が増えた理由は、はっきりしていません。そんな「岡田」の由来は地形です。
森岡先生
「丘は周囲よりちょっと小高い所を丘って言います。田んぼは、水はけが大事ですので、基本的に低い所を田んぼにします。でも、低い土地を全部開発してしまうと、今度頑張ってちょっと小高い所を田んぼにするのですね。頑張って開発した小高い所の田んぼを持っていた人が岡田さんになります」
佐藤ちひろアナ
「かなり頑張った方なのですね」
森岡先生
「田んぼを水田化するということは皆さん頑張っていますけどね」
佐藤ちひろアナ
「そうですよね」
「長谷川」は奈良の初瀬川
お次は34位の「長谷川」です。
森岡先生
「長谷川は実は由来がきっぱり分かっています」
佐藤ちひろアナ
「えっ!どんな由来なのですか?」
森岡先生
「奈良県の桜井市、南の方の桜井市に長谷寺があります」
「あの前を初瀬川という川が流れています。その辺りに住んでいた方が名乗ったのが長谷川さんです。今、皆さん長谷川って普通に読んでいますけど、よくよく考えてみると難読ですよね」
佐藤ちひろアナ
「確かに“はせ”って読まないですよね」
森岡先生
「読まないですよね。ながたにですもんね。どういう意味かと言うと、大阪湾から川を昔船でずーっと遡ってきて、最後に行き着いた船着き場が泊瀬(はつせ)と言いますが、それがちょうどここの辺りだったらしいのです。この泊瀬から『はせ』に変わっていて、それがちょうど長い谷だったので、長い谷って書いて“はせ”になった。音に対して地形を後から意味を当てているという」
「長谷川」子孫に鬼平犯科帳
さらにその地域に住んでいたのが武士の長谷川一族です。子孫には、時代劇「鬼平犯科帳」でおなじみの「長谷川平蔵」がいたといいます。
森岡先生
「架空の人だと思っている方が多いのですけども、実は実在した人物で、旗本なんですね。この旗本の鬼平、長谷川平蔵というのは、実はここをルーツとする長谷川一族の子孫というのが分かっています」
「村上」は長野県の地名
村の上手という方位が由来の村上ですが、圧倒的に多いのは地名由来だといいます。
森岡先生
「長野県に村上という地名があります。ここをルーツとする村上一族というのがいて、かなりの名家で、戦国時代は信濃の有力な戦国大名になっています。さらに、もっと古い時代には鎌倉時代から栄えていたので、分家が全国各地に出ているのですね。なので全国で村上さんが増えていっています」
佐藤ちひろアナ
「そうなのですね!」
そんな村上一族の中で、あの織田信長を破った村上海賊も…。
森岡先生
「子孫も、今も村上の名を名乗っていると言われていて、愛媛県や広島県の瀬戸内海側に住む村上さんがものすごく多い」
「石井」全国各地に分布
続いては37位の「石井」です。「井」という字は用水路や水くみ場という意味です。
森岡先生
「川だと河原に石がたくさんありますから、特に石の多かった用水路や水汲み場、そういう所を指した名字だと思います。これも全国各地にそういう場所があったはずで、石井さんも全国に広く分布しています」
「坂上」より多い「坂本」
そして39位の「坂本」は地形由来です。
森岡先生
「本っていうのは下っていう意味ですから、坂の下の方という意味なので、どこかの山の麓なり、何か坂の下の麓に住んでいた人が名乗った。ですから、これも全国各地に分布していますね」
佐藤ちひろアナ
「坂上とかもいるってことですよね?」
森岡先生
「上と書くと、“さかうえ”さんと“さかがみ”さんと読み方が変わってきますけど、坂があると上に住む人と下に住む人、どっちが多いかっていうと、多分下に住む方が多いですよね。なので坂本さんの方が多いです」
恒例の難読名字クイズ!
ここで恒例の難読名字クイズです。「四十八」に「願う」と書くこの名字、なんて読むでしょうか。
森岡先生
「これはもう知らない限り読めないと思いますけども」
佐藤ちひろアナ
「48の願い。かなり多い願いがあったのですね」
森岡先生
「これは漢字4文字なんですけど、読み方も4文字です。それで、全然対応していません」
佐藤ちひろアナ
「対応していない?」
森岡先生
「一番難しい所を先に言いますと、最後はらです」
佐藤ちひろアナ
「ら?ですか。よ?」
森岡先生
「よは合っています」
佐藤ちひろアナ
「“よどはら”さん?」
「四十八願」正解は
森岡先生
「これはもう、難しいので正解を言いますと、よいならって言います」
佐藤ちひろアナ
「よいなら?」
森岡先生
「読めないですよね」
佐藤ちひろアナ
「分からないです」
森岡先生
「この名字、実は結構歴史のある名字で、戦国時代の栃木県の武士に四十八願氏というのが出てくるのですよ。ですから、適当に付けた名字ではないのですね」
さらに「四十八願(しじゅうはちがん)」という、阿弥陀如来が人々を救うために立てた48の願いという意味の仏教用語もあります。
森岡先生
「でも、どうしてよいならって読むかが分からないのですね。多分昔の人って仏教に帰依していますから、多分四十八願に関係することがあって、それとよいならを合体させたのだろうとは思います」
(2026年5月11日放送分より)
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