「国旗損壊罪」の議論から考える表現の自由と国家、そして”私刑”どう抑え込む? “日の丸”を守る法律を定めることの是非

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■「国旗損壊罪」について議論される理由とは

自民党PT「国旗損壊罪」創設へ
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 自民党のプロジェクトチームは「国旗損壊罪」創設に向け、度重なる議論を重ね、22日に法案骨子案が了承された。処罰対象としては「路上などで公然と国旗を損壊」「損壊する様子を撮影しSNS投稿」など、「『人を著しく不快または嫌悪の情を催させる方法』で損壊する行為」が挙げられており、罰則は「2年以下の拘禁刑または20万円以下の罰金」。“国旗の尊重義務”は設けず、「表現の自由」を尊重するとしている。

 刑法92条には「外国国章損壊罪」として、侮辱を加える目的で外国の国旗などを「損壊」「除去」「汚損」した場合に処罰する規定がある。法定刑は2年以下の拘禁刑または20万円以下の罰金で、過去の起訴事例は3件だ。

 自民党・元衆議院議員の長尾敬氏は、国家の象徴である国旗を守るため、国旗損壊罪は必要だと考えている。「外国国旗の損壊には罰則があるが、日本国旗にはないのはバランスがおかしい。表現の自由を侵害するのではなく、“国旗への侮蔑”を法律として落とし込む必要がある。国旗損壊で心を痛めている国民もいるため、立法事実はある。秩序を守るためにも、罰則ありで成立させることが必要だ」。

 法の運用については「外国国旗については、当該国政府の判断があり、罰則が付いている。日本国内でも『侮蔑の気持ちの有無』や『公でやっているのか』などから、外国国旗に合わせるのが自然ではないか」と語る。

 “損壊”の定義はどうするか。「損壊よりも『公で侮蔑しているか』だ。レベルの高い芸術であれば、表現の自由の中で『侮蔑ではない』と伝わる。そこに侮蔑や、国旗損壊をあおる気持ちがあるかは表現者の自由だ」。

 国旗国歌法を引き合いに出し、「僕は『当たり前だから法律は要らない』と思ったが、『もめ事があるため法律に落とし込んだ方がいい』と成立した。国旗も現実に焼いたり破ったりするトラブルが起きている。表現の自由の範囲であれば、侮蔑でないことは伝わるだろう。法律はない方がいいが、ないと秩序が保たれないため作る」と説明した。

 一方、前衆議院議員(立憲民主党)で弁護士の藤原規眞氏は、国旗損壊罪に反対の立場を取る。「刑法では、守られるべき“保護法益”が必要だが、感情などの主観以外に見いだせない。処罰対象もあいまいで、罪刑法定主義との問題が必ず生じる」。

 そして、「国旗を損壊することは、私もいいと思わない。ただ、そうした象徴的表現もアメリカ連邦最高裁では認められており、刑罰で抑制するのは良くない。現状の法律でも十分対応可能だ」と続けた。

 具体例として「外国人が日本国旗を損壊した場合、暴行や脅迫、威力業務妨害、建造物侵入などで対応可能だ。外国国旗損壊の場合には、厳然とした保護法益として“円滑な外交関係”がある」と話しつつ、「日本国旗は『快・不快』の感情論になりがちだ。保護法益を主幹で構成するのは慎重であるべき。名誉毀損や侮辱ですら、感情ではなく『社会的名誉と評価』だと判例で定められている」とした。

 文筆家の佐々木俊尚氏は「アメリカには『国旗損壊を認めないことは、表現の自由を認める国家観を揺るがす』というロジックがある。そう考えると、『国家とは何か』に行き着く。欧米では血で血を洗う闘いの上に、民主主義社会が成り立った。しかし日本は明治維新を経て、平和裏に移行した。すると『我々自身が国家を支える』という強い意志があまりない」と、国民性の差に触れる。

 加えて、近現代を振り返り、「戦前は皇道主義のような部分が国家の根本にあったが、21世紀の日本で『国家の中心は天皇だ』と思う人は、あまりいない。国の中心は“世間”や“空気”といった、あいまいなものでしかなく、そこで規制を厳しくするのは時代に合わない」と指摘する。

 国家観にも触れる。「(日本における)『国家』はカタい漢字2文字ではなく、郷土愛や、国土をきれいだと思う気持ちだ。外国人観光客に腹を立てるのは、『電車で並ぶ』『ゴミを持ち帰る』といった、我々が共有する生活文化や風景の美しさに対する、漠然とした空気感からだ」。

 だからこそ、「そうした文化を象徴する“日の丸”のイメージに、国旗損壊罪はそぐわない。各国と比較してもいいが、その前に『我々にとって、国とは何なのか』の議論を深めた方がいい」と提案する。

■法の整備が「私刑」を減らす?
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