世界初『完全養殖ウナギ』試験販売へ 量産化の課題は“コストの高さ”

世界初『完全養殖ウナギ』試験販売へ 量産化の課題は“コストの高さ”
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夏の風物詩のウナギ。日本で食べられるウナギのほとんどは天然の稚魚から育てた『養殖ウナギ』ですが、卵から育てた『完全養殖ウナギ』が29日から世界で初めて試験販売されます。近年、稚魚の不足も指摘される中で、私たちの身近な食文化を守る一歩となるのでしょうか。

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1匹“4860円”その味は…

ウナギ
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29日から販売されるこちらのウナギたちのお味はというと。

荒井理咲子アナウンサー
「ふっくらしてます。脂もしっかりのっていてジューシーなんですが、しつこさがありません。いくらでも食べられそうです」

完全養殖うなぎ蒲焼
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税込み4860円と少しお高めのウナギ。天然ではなく、卵から人工孵化(ふか)まで完全養殖という画期的なウナギです。商品化されるのは世界初となります。

山田水産 山田信太郎社長
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山田水産 山田信太郎社長
「これは打ち上げ花火で終わらせてはいけないなと。試験販売だけで終わってはいけないので、より一層、最後まで完成させないといけない」

“天然の稚魚”守る切り札に

うな重、肝、う巻き、時には刺身でも。日本人がウナギを食べ始めたのは5000年前、縄文時代とされています。土用の丑の日など生活に根付いた習慣もあり、一人あたりの消費量は日本が世界1位です。そんな高い需要を背景に養殖が始まったのは明治時代のことでした。ただ、ウナギの養殖は一筋縄ではいきません。天然の稚魚シラスウナギを捕まえて育てるというやり方しかなかったからです。

その養殖に不可欠なシラスウナギを取り巻く情勢は近年、大きく変わってきました。消費拡大に伴う乱獲で、資源保護を訴える声が強くなったのです。ニホンウナギの稚魚をワシントン条約で規制しようという動きもあったくらいです。また、シラスウナギは“白いダイヤ”とも呼ばれ、国際的な犯罪ネットワークで高額な取引商品として扱われてきました。

ユーロポール(欧州刑事警察機構)
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ユーロポール(欧州刑事警察機構)
「密漁業者26人が逮捕され、フランス・スペイン・ベルギー・ポーランドの密輸ネットワークが解体された。シラスウナギはアジアの闇市場で高値で取引されている」

密漁・密輸
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ヨーロッパでのシラスウナギの密漁・密輸は年間100トンに及ぶといいます。ただ今回、世界で初めて売り出される養殖のウナギは、成魚が産んだ卵を人工孵化させるというもの。一般化すれば密漁や規制という懸念がなくなる日がくるかもしれません。

コスト減へ カギは“エサ開発”

山田水産完全養殖チーム 松尾周悟リーダー
(Q.これはどういう状態)
「卵から人工授精し、孵化して、飼育してから約200日経った完全養殖のシラスウナギ。ここから約1年かけ飼育して、大人になった、いわゆる成鰻がこれ。完全養殖のウナギです」

ウナギの生態
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謎多きウナギ。その生態が分かってきたのは、ここ最近の話です。フィリピン沖のマリアナ海溝、ここからウナギの一生は始まります。ふ化した稚魚は海流に乗りながら成長し、東アジアを回遊して、日本にたどりつきます。そして、繁殖のために再びマリアナ海溝付近へと戻っていきます。その距離6000キロ。壮大な旅ですが、それを水槽だけで可能にしたのが今回の完全養殖です。

山田水産 山田信太郎社長
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山田水産 山田信太郎社長
「エサの汚れや、水の汚れを非常に嫌がる。エサを1回やるたびに水槽をきれいにして隣に移して…作業を繰り返して丁寧にやったのがブレイクスルーの一つ」

えさ
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完全養殖自体は2010年には成功していましたが、1匹あたりのコストが4万円と商品化にはほど遠い状態でした。当時はえさにアブラツノザメの卵が使われていましたが、鶏卵を使うことなどによって、えさのコストと質が激烈に改善したのが今回のカギです。

山田水産 山田信太郎社長
「“天然資源を守るための取り組み”と世界に言えるようなってくれたら。使命としてやろうと。ハートの問題が一番大きかった」

始まったウナギの完全養殖。大正時代から続く人気店に聞いてみると。

八ッ目やにしむら目黒店 松本清店主
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八ッ目やにしむら目黒店 松本清店主
「本当にうれしいニュース。価格安定になりますよ。この5~6年、ものすごく高値で跳ねちゃって。それはシラスウナギがとれなかったから。うな重が5000~6000円なんていう値段になる一因だからね。早くそれがサイクルに乗るのを楽しみにしています」

今後の“量産化”課題は

ウナギの養殖
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今、市場に出回っているウナギもほとんどが『養殖』です。市場に出回っている養殖は、まず天然のシラスウナギ(稚魚)を捕獲し、養殖場で半年~1年以上かけて育成、ウナギ(成魚)を出荷しています。

シラスウナギの確保
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ただ、課題となっているのが、シラスウナギの確保です。過去40年、日本でとれた量を見ると、豊漁だった年と少ない年を繰り返しながら減少傾向にあり、40年前の約30トンに比べると、今は半分近くまで減っています。

そこで、安定的にウナギを供給するため開発されたのが『完全養殖』です。ウナギの卵を孵化させて、レプトセファルス(赤ちゃんウナギ)に育て、人工シラスウナギに飼育、ウナギにして出荷。さらに、ウナギから得た卵を再び育てていくというサイクルを人工で確立したもの。30年以上の研究で今回、ようやく試験販売にこぎつけました。

養殖のコスト
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今後の課題としてあるのが“コストの高さ”です。水産研究・教育機構によりますと、完全養殖で人工シラスウナギを育てるコストは、10年前は1匹あたり4万円でした。エサの改良などで現在は1匹あたり1800円になりましたが、天然のシラスウナギの取引価格は1匹あたり180~600円で、まだ3~10倍高くなっています。

コストが高い理由はいくつもありますが、その1つとして、ウナギの完全養殖の開発を進める近畿大学・田中秀樹特任教授は、人工シラスウナギに成長させるまでの“エサやりの難しさ”を理由に上げています。

近畿大学・田中秀樹特任教授
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赤ちゃんウナギは「2時間おきにエサを与える」「自らエサによってこないため、水槽全体にエサを入れる必要がある」ため、水槽がすぐに濁り、何度も水の入れ替えが必要になり、時間も人件費もかかってしまうといいます。

コストを抑える解決策として、田中特任教授は“エサやりの機械化”を挙げています。全自動化すれば人件費などのコスト削減につながるということです。その上で「最も大事なのは自然界にいるウナギの資源を守りながら、将来的に持続可能な供給体制をつくること」としています。

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